2019 Fiscal Year Annual Research Report
婦人科悪性腫瘍の過凝固状態に着目した新たな治療戦略の探索
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18K16755
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 学 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30638979)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | venous thromboembolism / tissue factor / endometrial cyst |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年は「悪性腫瘍以外でのTissue Factor(TF) の発現頻度と悪性化に及ぼす影響の解明」に沿った研究を実施した。これまでの研究でTFは卵巣癌の中でも、特に明細胞癌で高発現であることがわかっている。その明細胞癌では子宮内膜症を合併していたり、卵巣の子宮内膜症性嚢胞が悪性転化して明細胞癌になることも知られている。 そこで、当院で2013年から2017年までに手術を行った75名の子宮内膜症性嚢胞の手術検体を用いて、TFの 免疫染色を行なった。219枚のスライドを検鏡してTFの発現状況を調べ、「高齢」「腫瘍径」といった子宮内膜症の悪性転化のリスク因子との関連を解析した。発現頻度に関しては、40歳以上では40歳未満に比べて発現頻度が高かった。また、75名の子宮内膜症患者の中で、2名が静脈血栓塞栓症(VTE)を合併していたが、内膜症組織でTFが発現していたのは1名で、強度も弱陽性と弱かった。 子宮内膜症に限った中では、卵巣癌で見られたような相関は見られなかったが、TFの発現は見られた。他の良性卵巣腫瘍でTFの発現が見られないようであれば、TF発現が子宮内膜症に特徴的ということになり、悪性転化の鍵となる可能性がある。もしくは、子宮内膜症患者でVTE合併率は2.6%で、以前に私が解析した卵巣癌での10分の1程度であった。これは、子宮内膜症の組織でTFが発現していても、悪性転化を起こしていない段階では、VTEを発生させるほどの影響なないとも考えられ、悪性転化とともにTFが活性化されてVTE発症につながるという可能性も示唆すると考えられた。
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