2018 Fiscal Year Research-status Report
妊娠高血圧症を合併した周産期心筋症における胎盤由来バイオマーカーの解析
Project/Area Number |
18K16756
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 峻志 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (00792061)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 周産期心筋症 / バイオマーカー / micro RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
女性の社会進出に伴い、妊娠・出産の高齢化が全世界的に進んでいる。高齢妊産婦では、若年妊産婦に比べて、様々な周産期合併症に罹患しやすいことが分かっている。とりわけ、周産期に新規の心不全を来す、周産期心筋症のリスクは30代後半の妊婦では、20代前半に比べて数倍高いことが分かっている。しかしながら、周産期心筋症は、極めて希少な疾患(日本では50-100人/年)であり、今までヒトの症例及び検体を集積することが困難であった。そのため、周産期心筋症のバイオマーカーの探索及び創薬に至ることができていなかった。国立循環器病研究センターが中心となって、私達はわが国で初の、周産期心筋症に対する前向き臨床調査研究を実施し、登録症例検体(母体血清・母体心筋検体)を集積した。集積した検体を解析し、創薬や診断に繋がる、高血圧性(妊娠高血圧症を合併した)周産期心筋症のバイオマーカーを探索すること(とりわけ、母体血中で発現が亢進しているmicro RNAを探索すること)を平成29年度の目的とした。 健常産褥婦及び高血圧性周産期心筋症患者の血液検体を用いて、妊娠高血圧症に特異的に発現が亢進しているmicro RNAの発現をまずはqRT-PCRにより解析した。その結果、高血圧性周産期心筋症患者に特異的に発現が亢進してるmicro RNAをいくつか同定した。 そして、同定したmicro RNA mimicsを周産期心筋症モデルマウスに投与したところ、心機能の増悪を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既報の臨床研究の結果から、周産期心筋症はheterogeneousな病態であることが分かっている。取り分け、高血圧性周産期心筋症と非高血圧性周産期心筋症では病態が異なっている。本研究を通じて、高血圧性周産期心筋症に特異的なバイオマーカー(micro RNA)を同定し、その分子機序を解明することを目的とする。 平成29年度の研究成果は、妊娠高血圧症に特異的なmicro RNAの一部が高血圧性周産期心筋症患者の血液検体でも発現が亢進していることを確認した。またモデル動物を用いて、同定したmicro RNAが心不全を増悪させることも確認した。 今後は、母体血中の網羅的なmicro RNA解析を行うための、micro RNA sequencingの研究準備を行っている。研究計画は、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
健常産褥婦及び高血圧性周産期心筋症患者の血液検体を用いて、micro RNA sequencingによる網羅的な解析を行う。解析結果は、学会や雑誌等で報告を行う。
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Causes of Carryover |
血液検体を用いた、micro RNA sequencingの実験系は当初考えていた以上に煩雑であり、実験手法の確認や必要な機材・検体の調整に思いの外時間がかかった。 本年度は、実際にmicro RNA sequencingを行い、疾患特異的なmicro RNAを探索する。また探索したmicro RNAの標的遺伝子をRNA sequencingなどにて網羅的に解析する予定である。
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