2018 Fiscal Year Research-status Report
スフェロイド形成細胞の形態変化に着目した、卵巣癌腹膜播種進展の病態解明と治療開発
Project/Area Number |
18K16757
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田口 歩 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (60756782)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | スフェロイド / 腹膜播種 / KRAS |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス腹膜癌細胞株であるID8にKRAS活性化をした細胞株(ID8-KRAS)では浮遊状態でのスフェロイド形成の亢進と腹膜癌形成の促進を認めていた。KRAS活性化とスフェロイド形成の関係を調べるため、まず、ヒト細胞株(RAS経路に変異を認める卵巣がん細胞株2種と、変異を認めない卵巣がん細胞株3種類)を検討した結果、スフェロイド形成能には明らかな差は認めなかった。次に、2016 PLoS Oneで報告した通り、KRASのみならずcMYCもマウスin vivoモデルにおいて腹膜播種形成を促進することを確認していることを元に、cMYCも同様にスフェロイド形成を促進する作用があるかを検討した。その結果、cMYC導入ID8株(ID8-MYC)ではID8に比べて有意にスフェロイド形成能が高いことを見出した。これらの結果より、スフェロイド形成能に影響を及ぼす因子はKRASの活性化以外のがん遺伝子変異の影響も関与している可能性が示唆された。 次に、がん遺伝子の有無と、形態変化によって発現が変化する遺伝子群を検討するためにマイクロアレイ検査を行った。その結果、ID8細胞とID8-KRAS細胞は2次元培養では遺伝子発現にほとんど差を認めなかったのに対し、3次元培養においては顕著な遺伝子発現変化を認めること、特に3次元培養においてID8-KRAS細胞でRAS-RAF-MEK経路の活性化が顕著であることを確認した。また、この経路の阻害剤であるTrametinibを使用することでin vitroにおけるスフェロイド形成の有意な阻害を認めるとともに、マウスモデルにおける腹膜癌形成を有意に阻害することを確認した。また、マイクロアレイの検討より、スフェロイド形態におけるグルタミン代謝経路の活性とマクロファージなどのケモカインであるCXCL17の発現上昇を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スフェロイド形成の亢進がKRAS変異特異的なものかどうかを、ヒト細胞株を用いた検討と、cMYC導入マウス細胞株を用いて検討し、KRAS特異的でないことを確認できた。また、in vivoモデルにおいて、KRAS誘導性のスフェロイド形成亢進をターゲットとした治療戦略についても検討ができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
代謝経路についての確認としては、グルタミン経路がスフェロイド形成に重要である可能性が示唆された。この結果をもとに、グルタミン欠乏状態において、スフェロイド形成能に及ぼす影響を検討する。 また、CXCL17の検討に関しては、2018年度に引き続きshRNA技術を用いたshCXCL17細胞株を樹立し、shCXCL17-ID8-KRAS株とshCXCL17-ID8株を用いてin vivoマウスモデルを作成し、腹水形成や腹膜播種形成に及ぼす影響を検討する。また、腹腔内環境の変化を腹水中のマクロファージやTreg, MDSCに着目して検討する。 さらに、2018年度に引き続き、CRISPR-Cas9技術を用いてCXCL17-KO株の作成を継続し、樹立に成功した際には、CXCL17-KO株を用いたin vivoモデルの作成を行い、形質の評価を行う。
|