2018 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌の微小環境をターゲットとした層別化による個別化治療の開発
Project/Area Number |
18K16769
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 隆介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (40782363)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 腫瘍微小環境 / トランスレーショナルリサーチ / CD276 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は遺伝子発現サブタイプを背景とした卵巣がんの腫瘍微小環境に基づく新しい病理組織学的細分類を確立し、予後や治療感受性に関連することを報告してきた。独自の解析から卵巣高異型度漿液性癌の腫瘍微小環境においてB7ファミリーのCD276/B7H3が免疫抑制因子のみならずメタルプロテアーゼファミリーのMMP14と強調して間質反応や浸潤に関与する仮説を打ち立てた。本研究の目的はこれを立証し、ターゲット分子の機構を解明することで、卵巣癌の腫瘍微小環境を層別化し、①免疫抑制因子を排除して免疫反応を誘導し、②浸潤を抑制するという2つの治療戦略を同時に行う治療法を開発し、個別化治療に応用することである。 初年度はB7H3が①については免疫抑制細胞として骨髄由来免疫抑制細胞Myeloid derived suppressor cells(MDSC)が関連していることを見出した。さらにRNAシークエンスを用いてB7H3ノックアウト細胞株とコントロール細胞株を比較することで、MDSCを誘導するサイトカインの候補を複数見出した。②については浸潤に関連するMMPファミリーやExtra cellular matric(ECM)関連の遺伝子、Epithelial Mesenchymal Transition(EMT)関連の遺伝子がノックアウト群で抑制されていた。このことからB7H3はMMPファミリーおよびECMやEMT関連の遺伝子を直接制御している可能性があり、現在これらの候補因子の機能的メカニズムを探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の進捗として、①についてはB7H3をCRISPR/CAS9システムでノックアウトしたマウス卵巣癌細胞株を樹立した。マウス自然免疫モデルにおいてコントロール細胞株に比してノックアウト細胞株がマウス皮下移植において、腫瘍形成能が遅延することを認められた。さらに骨髄由来免疫抑制細胞Myeloid derived suppressor cells(MDSC)がノックアウト細胞株を移植して形成された腫瘍内で有意に減少することを認めた。つまりB7H3は免疫抑制環境をMDSCを介して作り出している可能性が示唆された。また②についてはB7H3のノックアウト卵巣癌細胞株はMMP14の蛋白発現低下がウェスタンブロッティングおよび腫瘍組織の免疫組織化学染色で確認されており、B7H3はExtra cellular matrix(ECM)を誘導している可能性が見出された。さらにRNAシークエンスを用いてB7H3ノックアウト細胞株とコントロール細胞株を比較することで、MDSCを誘導するサイトカインの候補を複数見出した。浸潤に関連するMMPファミリーやExtra cellular matric(ECM)関連の遺伝子、Epithelial Mesenchymal Transition(EMT)関連の遺伝子がノックアウト群で抑制されていた。このことからB7H3はMMPファミリーおよびECMやEMT関連の遺伝子を直接制御している可能性があり、現在これらの候補因子の機能的メカニズムを探索している。進捗としてはおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はRNAシークエンスを用いて、B7H3のノックアウト細胞株と過剰発現株を網羅的遺伝子発現解析を行い、B7H3が制御しているサイトカインがMDSCを誘導し、さらにMMPファミリーを誘導することでExtra cellular matric(ECM)に関わる遺伝子発現を誘導し浸潤能の亢進に寄与しているか検証する。 さらにマウスの自然免疫モデルを用いて、B7H3およびその周辺で免疫抑制や浸潤を抑える治療実験を行うことで、B7H3を治療標的とした新しい卵巣癌治療の開発を予定している。B7H3のノックアウトマウスを入手し、間質でのB7H3の機能抑制モデルを用いることで、腫瘍微小環境におけるB7H3の役割も検証したいと考えている。 課題としては治療抗体がB7H3のどの部位を認識するかにより、その種々の機能が抑制されるか変わってくる可能性が示唆されており、B7H3のより詳細な機能解析が必要とされることから、期限内および今年度の予算で検証が難しい可能性がある。 またB7H3のレセプターが明らかになっておらず、これを明らかにすることが腫瘍微小環境におけるB7H3の機能解析につながると考えると考える。
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Research Products
(1 results)