2018 Fiscal Year Research-status Report
インターフェロン誘導性抗ウイルス因子の胎盤形成に及ぼす影響
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18K16773
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
泉田 真生 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90567299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内在性レトロウイルス / 妊娠高血圧症 / 胎盤形成 / シンシチン / インターフェロン |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は、1)インターフェロンガンマが抗ウイルス因子を介して胎盤形成に与える影響を証明すること、2)妊娠高血圧症患者の胎盤で、抗ウイルス因子の上昇が認められるか確認することの2点である。本研究によって、炎症性疾患や感染症に罹患した妊婦に流産や早産が多い原因の解明や治療法の開発を行うことができる。 これまで、マウスへのインターフェロンガンマ投与は妊娠を阻害し、感染症を原因とするヒトの流産では母体のインターフェロンガンマが高値の疾患があることが報告されている。ヒトの胎盤はシンシチンが細胞融合することで形成されるが、このシンシチンは、太古にヒトがレトロウイルスの感染を受けゲノム上に組み込まれた内在性レトロウイルスの一つであり、その構造はレトロウイルスのエンベロープと同じである。一方、我々はすでにインターフェロンガンマによって誘導されるthiolreductaseがウイルス・エンベロープ蛋白質のS-S結合を切断することによりウイルス感染を抑制することを発見した。 2018年度は、主にin vitroでインターフェロンガンマによってこのthiolreductaseが誘導されシンシチンによる胎盤融合を阻害することを証明した。まずヒト絨毛癌細胞をインターフェロンガンマで処理し、目的のthiolreductase発現が起きることを確認した。また、シンシチンを強制発現させた細胞をインターフェロンで処理すると細胞融合は低下した。次にthiolreductaseのノックダウン細胞系を構築し細胞融合アッセイを行った。ノックダウン細胞ではインターフェロン処理を行っても細胞融合を起こした。これらのことより、in vitroで、インターフェロンガンマによって誘導されるthiolreductaseがシンシチンが起こす細胞融合を阻害することが証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の予定であったin vitroでの実験を終了することができた。次の実験で用いるノックアウトマウスはすでに入手している。
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Strategy for Future Research Activity |
thiolreductaseのノックアウトマウスの受精後にインターフェロンガンマを投与して出産数、成長曲線を確認する。胎盤レベルでこのthiolreductaseの発現を免疫染色にて確認する。 妊娠高血圧症患者から出産後に胎盤を提供していただき、thiolreductaseのRNAレベル、タンパク質レベルでの発現を非患者の胎盤と比較する。
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Causes of Carryover |
試薬節約に努めたことと、今後のマウスの実験やヒトの検体を用いた実験にかかる経費が当初の予定よりも多くかかることを予想したため。ヒト検体の採取にかかる移動費や試薬代、今後の論文投稿にかかる英文校正費用や出版費に計上する予定である。
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