2018 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌特異的ステムセルメモリーT細胞の同定と選択的増殖による新規免疫療法の開発
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18K16813
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 侑希 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (60733649)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ステムセルメモリーT細胞 / 免疫チェックポイント阻害剤 / 免疫療法 / 子宮頸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、CD44 low, CD62L high, Sca-1 highであるCD8陽性T細胞が存在することが明らかになり、また、その細胞は既知のメモリーT細胞より未感作で、他のメモリーT細胞(セントラルメモリ-T細胞、エフェクターメモリーT細胞)やエフェクターT細胞などへの分化能を有することからstem cell memory T細胞 (TSCM)と呼ばれる。研究代表者は、TSCMの中でも特に、腫瘍抗原特異的なCD8陽性TSCMを選択的に増殖することで、ニボルマブなどの分子標的薬の奏効率を改善しようと考えた。 そのため、まずは、マウスがん細胞株を移植した担癌マウスモデルにおける、腫瘍抗原特異的なCD8陽性TSCMの同定法の確立を試みた。播種後の経過日数や組織別(腫瘍・所属リンパ節・脾臓・末梢血中等)における発現をフローサイトメトリー法で評価した結果、腫瘍抗原特異的なCD8+TSCMがより検出できるタイミングや高発現する組織を明らかにし、実験条件の最適化に成功した。 次に、上記の実験条件を用い、免疫チェックポイント阻害剤 (抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体) の投与により、腫瘍抗原特異的CD8陽性TSCMの数を増強できるか評価した。その結果、腫瘍抗原特異的CD8陽性TSCMが高発現する組織においては、抗PD-L1抗体単独投与および両剤併用により、その数が増強することが明らかとなった。また一方、低発現の組織においては、腫瘍抗原特異的CD8陽性TSCMは増殖せず、その他のセントラルメモリーT細胞やエフェクターT細胞が増殖することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の平成30年度の計画は、以下の2つであった。①マウスのin vivoの系における、腫瘍抗原特異的なCD8陽性ステムセルメモリーT細胞(CD8+TSCM)の同定法を確立する。②①で確立された条件を用い、抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体の投与により腫瘍抗原特異的なCD8+TSCMが増殖しているかを検証する。これらの計画に関しての進捗具合を以下に示す。 ①に関しては、独自に樹立した人工抗原を標識したがん細胞株を用いることで、脾臓、末梢血、所属リンパ節および腫瘍内の腫瘍抗原特異的なCD8+TSCMが、フローサイトメトリーで検出可能になった。その結果、抗原特異的なCD8+TSCMが高発現するタイミングおよび組織が明らかとなった。②に関しては、抗PD-L1抗体単独投与および抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の併用により、CD8+TSCMの高発現組織において、その数が増強されることを明らかにした。 以上より、現時点において、研究は順調に進捗しており、ほぼ満足できる達成度であると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、既存の免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体)の投与により、腫瘍抗原特異的CD8陽性TSCMが高発現する組織において、その数が増強されることは確認できたが、どのように増殖するのか、また、なぜ高発現組織でのみ増殖が増強されるのか、そのメカニズムは不明である。 来年度は、各組織の腫瘍抗原特異的CD8+TSCMにおける、4-1BB、TIGIT、Lag3、PD-1などの共刺激分子及び共抑制分子の発現をフローサイトメトリーで解析し、更には、マイクロアレイにより網羅的に解析することで増殖のメカニズムの詳細を検討する予定である。 一方、CD8+TSCMが、どのシグナルを介して増殖し、その後、どのタイミングで、抗腫瘍能を有するセントラルメモリーT細胞やエフェクターT細胞に分化しているのかGFPマウスを用いて明らかにする予定である。 最終的には、CD8+TSCMの数をより増強する併用薬の探索をマウスのin vivoの実験で行う予定である。
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