2021 Fiscal Year Research-status Report
インスリン抵抗性異常を基盤とした子宮内膜脱落膜化不全と産科合併症の発症機序の解明
Project/Area Number |
18K16814
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
尾崎 理恵 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (40816708)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不育症 / 妊娠高血圧症候群 / PPARgamma |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜の脱落膜化は胚の着床・胎盤形成に必須である。脱落膜化不全は、不妊症、不育症、妊娠高血圧症の発症の原因となる。子宮内膜の脱落膜化にはインスリンシグナルが重要であることが分かっている。一方で、不妊症・不育症や妊娠高血圧症候群の患者ではインスリン抵抗性の異常を有する事が多い。インスリン抵抗性異常を示す不妊患者にインスリン抵抗性改善薬を用いることが試みられているが、インスリン抵抗性改善薬が子宮内膜の脱落膜化に与える影響を解析した報告はない。本研究は、インスリン抵抗性改善薬であるpioglitazoneがヒト子宮内膜脱落膜化へ与える影響と、そのターゲット遺伝子であるPeroxisome Proliferator-Activated Receptor gamma (PPARγ)について解析した。 本研究では患者より同意を得て子宮内膜を採取し、初期培養後、子宮内膜間質細胞を分離・増殖した。cAMPおよびプロゲステロンを添加し細胞をin vitroで脱落膜化させ、脱落膜化過程でpioglitazoneを添加し、PPARγと脱落膜化マーカー(PRL, IGFBP1)の発現を分子解析した。PPARγの発現は脱落膜化に伴い著しく低下した。PPARγ agonistであるpioglitazoneを添加すると濃度依存性にPPARγの発現は亢進し、PRL・IGFBP1の発現は抑制された。 以上よりインスリン抵抗性関連遺伝子であるPPARγは脱落膜化の制御に重要であることが示された。インスリン抵抗性改善薬であるpioglitazoneは高濃度ではPPARγの発現亢進を通して脱落膜化を抑制する可能性があるが、通常の内服量で得られる血中濃度では子宮内膜の脱落膜化への影響は限定的と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの流行に伴い、試薬の流通不足や、臨床業務負担が増大したため研究に割ける時間が減少しやや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
PPARgammaの機能解析をRNA-seqを用いて行った。今後はデータの解析を進めるとともに発現タンパクの解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行に伴い臨床業務が増大し研究に携わる時間が減少したため研究計画がやや遅れている。今後RNAseqデータの解析およびタンパク発現量の定量、データの論文化を行っていく予定である。
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