2019 Fiscal Year Research-status Report
嗅上皮再生機序の解明と薬剤効果検証のための嗅上皮再生モデルの作製
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18K16840
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 正昭 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (10813743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 嗅上皮 / 嗅神経 / 基底細胞層 / 組織再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚の再生機序の解明と再生促進のための研究モデルとして、マウスなどの実験動物と嗅上皮初代培養が用いられているが、前者では継時的観察や嗅神経から嗅球への軸索伸長とシナプス形成に関する検討が難しく、後者は生体の組織構築を反映していないという不備がある。そこで本研究では、生体で見られる複数の細胞種による3層構造を保持した状態の嗅上皮組織を長期間培養できる培養法を検討し、薬剤処理などによる障害からの再生過程を詳細かつ継時的に観察できる培養系を確立する。さらに嗅球組織との共培養により嗅神経からの軸索伸長とシナプス形成をリアルタイムに検討できる、嗅上皮-嗅球シナプス形成モデルの確立を目指す。 昨年度、嗅上皮組織の短期間培養法を確立したので、今年度は1週間以上の長期培養の条件検討をおこなった。ICRマウスまたは昨年導入した嗅神経マーカーOMP-GFPマウス新生児の鼻中隔組織を用い、支持細胞、嗅神経、基底細胞それぞれの細胞種に対する抗体による免疫染色法で層構造と各層を構成する細胞の状態につき検討した。培地は前年度用いていた培地条件に加え、先行文献を参考に、嗅上皮培養培地や神経細胞培養培地など複数の培地に付き検討した。1週間以上の培養後、凍結切片を作製し、免疫染色法にて検討した。検討の結果、嗅神経細胞が死滅し、基底細胞が生存する条件が確認された。組織採取過程も嗅神経の物理的損傷であり、組織幹細胞である基底細胞が生存し、かつ嗅神経が死滅していることから、物理的損傷モデルが確立されたとみなし、今後の研究に用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期培養条件の検討を行い、長期に基底細胞が生存する条件を見出した。また、この条件で嗅神経が死滅し、組織幹細胞である基底細胞は生存していることから、後の嗅上皮再生モデルに使用可能な嗅上皮障害モデルが確立された。次年度は再生モデル及び嗅球との共培養モデルの作製に専念できる。
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Strategy for Future Research Activity |
I. 嗅上皮再生モデルの確立 本研究で確立した障害モデルを継続して培養し、再生可能か検討する。自然に再生しなければ培養条件を再検討するとともに、匂い因子の添加や、再生促進に効果がありそうな薬剤の添加を試みる。再生モデルの評価には免疫染色などのほか、ライブイメージングによる検討も行う。 II. 嗅上皮-嗅球シナプス形成モデルの確立 I.で確立した再生モデルと嗅球組織を共培養し、軸索伸長やシナプス形成が起こる条件を確立する。 III. 組織培養モデルを用いた嗅上皮再生機序の解明及び薬剤効果の検証 I. II.のモデルを用い、嗅上皮再生機序の解析と薬剤効果の検討を行う。様々な薬剤を添加し、再生時間の短縮、軸索伸長の早期化、シナプス形成の頻度などを指標とし、治療効果のありそうな薬剤を同定する。同定された薬剤は動物実験による検討を行うとともに、関連遺伝子について分子生物学、生化学、細胞生物学的解析を行い嗅上皮再生機序の解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度、長期培養モデルの確立と同時に、物理的損傷モデルが確立できたため、障害モデル作成時に予測されていた障害試薬代が不要であった。また初年度にOMP-GFPマウスを導入したことにより、実験に必要なマウスの購入が大幅に不要となった。また嗅神経を無染色の培養組織で観察可能となったため、組織評価のための抗体量も削減され、長期培養の条件検討に必要なサンプル数も減少したため培地やグロースファクターなどの予算も軽減され、予算の削減が可能となり次年度使用額が生じた。次年度使用額は「嗅上皮再生モデルの確立」や「嗅上皮-嗅球シナプス形成モデルの確立」の際に用いるグロースファクターやシナプス形成検討試薬、ライブイメージング装置の使用料などに使用し、本来予定していた検討条件をより多様な試薬で多数検討する予定である。
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