2020 Fiscal Year Research-status Report
ラセン神経節神経幹細胞の増殖・分化制御機構の解明とその聴力再生への応用
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18K16845
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安井 徹郎 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60803468)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再生医療 / 神経幹細胞 / エピジェネティクス / 内耳再生 / 聴覚再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では成体哺乳類中枢神経において神経幹細胞の存在が報告されており、その解析と再生への取り組みは著しい進捗を遂げている。その一方で聴覚神経における神経幹細胞研究は、その由来や分化傾向など未だ不明な点が多く、一次ニューロンである蝸牛ラセン神経節細胞は、成体哺乳類においては一度傷害されると再生しないと言われてきた。これに関して申請者は、成体マウスのラセン神経節においても内在性神経幹細胞が静止状態で存在するとの仮説を立て、その増殖・分化・成熟の制御が傷害された聴神経回路の再構築に重要な役割を担う可能性を考慮した。 そこで本研究では、成体ラセン神経節における内在性神経幹細胞を同定し、このラセン神経節神経幹細胞の増殖・分化制御機構を解明する。さらに、傷害時においてこの制御機構を応用することで、新生ニューロンによる神経回路機能の再獲得および聴力改善を目指した。 まず、申請者は本研究において成体マウスにおけるラセン神経節神経幹細胞の同定としてNa-Kポンプ阻害剤であるウアバインを8週齢のICRマウスの内耳正円窓に投与し、成体マウスにおける薬物性内耳傷害モデルマウスを作成した。この薬物性内耳傷害モデルマウスを追跡すると、僅かながらに障害後に増殖性および多分化能をもつラセン神経節神経幹細胞の存在が示唆された。 このラセン神経節神経幹細胞による聴神経回路の再構築を目的とし、外因子としての増殖因子の投与と内因子としてのエピジェネティクスを介した制御の応用により、その増殖およびニューロンへの分化制御機構を介した、傷害時における新生ニューロンによる神経回路機能の再獲得および聴力改善は達成された。 本研究内容は現在、英文学会誌に投稿・revise実験中である。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である成体ラセン神経節での内在性神経幹細胞の同定、およびこのラセン神経節神経幹細胞の増殖・分化制 御機構を応用した、傷害時における新生ニューロンによる神経回路機能の再獲得および聴力改善は達成され、さらにより精緻な追加研究として、このラセン神経節神経幹細胞の由来を同定のためレポーターマウスの購入・繁殖により神経幹細胞の追跡実験を行い、現在投稿・revise実験がほぼ終了している段階である。 学会誌により広く研究内容の発表に至らなかったためおおむね順調に進展の評価に止まるが、並行して元来の計画よりも進展した研究計画を立案・推進しており、今後よりよい進捗を報告できるものと期待します。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階でラセン神経節神経幹細胞の由来は同定されているが、その増殖および分化制御については部分的な機構解明にとどまっている。申請者らは、このラセン神経節神経幹細胞の周囲微小環境による制御に着目し、本研究では内耳障害を契機に増殖が開始することからミクログリアなどの炎症系の微小環境によるラセン神経節神経幹細胞制御を解明すべく、ノックダウンマウスの繁殖を開始している段階である。
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Causes of Carryover |
Revise実験に際し、COVID-19のためマウス受精卵の輸入が困難な状況が続いたため、実験計画の延長申請を行った状況である。投稿における掲載料および次年度のマウス飼育費として次年度使用額を予定する。
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