2018 Fiscal Year Research-status Report
副鼻腔真菌症の原因真菌とその微生物叢解析による重篤化予防と疾患制御に関する研究
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18K16853
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
角田 梨紗子 東北大学, 大学病院, 助教 (40596095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 副鼻腔真菌症 |
Outline of Annual Research Achievements |
副鼻腔真菌症は浸潤性と非浸潤性に大別され、疾患の重傷度や生命予後は大きく異なる。本研究の目的は、副鼻腔真菌症を微生物学的観点から解明し、重篤化の予防とエビデンスに基づいた治療戦略を提唱することである。具体的には、副鼻腔真菌症の原因真菌をribosomal RNA遺伝子解析により菌種レベルで同定すること、原因真菌の薬剤感受性の測定、薬剤耐性遺伝子を検出し、適切な抗真菌薬を検討すること、さらにその微生物叢を病態ごとに検討することである。 上記の目的達成のため、複数の研究協力施設において副鼻腔真菌症として手術を行った症例の副鼻腔内容物を収集し、検討を進めている。 副鼻腔真菌症診断の一般的な方法として培養検査や病理検査によって行われるが、培養検査の陽性率は3割以下と低い。一方病理検査では、真菌菌糸の確認にとどまり、菌種レベルの同定は不可能である。本検討では、ribosomal RNA遺伝子解析により手術検体から原因真菌を菌種レベルで同定し、病態や重症度との関連について検討する。これまでのところ、Aspergillus flavusまた担子菌類のSchizophyllum communeなどが同定されている。これまでの報告では、副鼻腔真菌症の原因菌としては、アスペルギルス属が多くを占めるとされていたが、その菌種レベルでの報告は少ない。また、Schizophyllum communeの報告も近年見られるようになっているが、本検討のように詳細な解析を加えているものは稀である。それゆえ、本検討では副鼻腔真菌症に関する新たな知見提供が可能となることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
副鼻腔内容物の手術検体の収集を継続して行っている。検体の培養では、発育する真菌は3割程度であり、概ねこれまでの報告と同様の結果となっている。培養陽性率を上昇させるため、培養期間を延長するなど工夫しながら行なっている。 真菌菌種同定のため、収集した副鼻腔内容物から微生物DNA抽出を行い、PCR法により真菌が独自に持つribosomal RNA遺伝子領域(ITS, D1/D2)を増幅し、シークエンスにより塩基配列を決定し、真菌菌種の同定を行っている。Aspergillus flavusや担子菌類のSchizophyllum communeなどが同定されている。以上のように検体収集、DNA抽出、PCR、遺伝子解析による同定については予定通り概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに副鼻腔真菌症の副鼻腔内容物の収集を継続する。特に侵襲性副鼻腔真菌症の検体は、症例数が少なく十分数収集できていないためより力を入れて収集する。これまで通り検体の培養、病理検査、バイオマーカー検査を継続し、遺伝子解析による原因真菌の菌種レベルでの同定を進める。侵襲性アスペルギルス感染症において、抗真菌薬としてアゾール系薬は第一選択となるが、近年それに対する耐性株が報告されている。収集株のうち、培養陽性株については薬剤感受性測定も行う。また、培養陰性株も含めて検体から抽出されたDNAからアゾール系薬耐性遺伝子(CYP51)の解析によりアゾール耐性状況を確認する。これらより、副鼻腔真菌症における原因真菌の薬剤感受性およびアゾール系薬の遺伝子レベルの耐性状況を把握した上で治療戦略を検討していく予定である。また、副鼻腔真菌症の微生物叢解析についての準備も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入量が見込みより少なかったため。次年度に使用する見込みです。
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Research Products
(1 results)