2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞を用いた遺伝性進行性難聴DFNA5の病態解析と創薬スクリーニング
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18K16856
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
細谷 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30645445)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 疾患iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、研究計画に基づいて正常iPS細胞にCRISPR/Cas9を用いてDFNA5変異を導入した、DFNA5疾患特異的iPS細胞を3ライン樹立した。これまでに、我々は、正常細胞からの内耳DFNA5陽性細胞の誘導法を確立している。(Hosoya et al, Cell Reports, 2017)これまでの予備実験による検討では、正常iPS細胞からDFNA5陽性細胞を高効率で誘導することが可能であることを確認していた。本研究においては、この方法を用いてDFNA5変異iPS細胞から同様の方法で変異DFNA5発現細胞を誘導することを予定していた。今年度は、実際にこれまでに樹立した疾患特異的iPS細胞から、DNFA5陽性細胞を誘導が可能であるか検討した。
遺伝子変異を加えたDFNA5変異iPS細胞からもこれまでの正常細胞に対する誘導法と同様の方法によってDFNA5発現する内耳細胞を誘導することが可能であった。実際樹立した3ラインに対して誘導を行いライン間の差も検討したが、ライン毎に大きな差がなく、DFNA5の発現を確認することが可能であった。DFNA5の発現に関しては、RNAレベルおよびタンパクレベルでの発現を確認することが可能であった。
並行して、正常細胞におけるDFNA5の発現の変化をRNAレベルおよびタンパクレベルで解析した。細胞ストレスXを負荷した場合、DFNA5の発現量はRNAレベルで増加することが分かった。一方、その後タンパクとして合成されたDFNA5はストレスの増加に伴い切断され分子量が変化することが確認された。今後、疾患ラインにおいて本現象が影響されるかどうかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、複数の疾患ラインを準備することができた。今後は、これらのラインを用いて実験計画に基づき機能解析を行っていく。
疾患ラインからも目的とするDFNA5陽性内耳細胞の誘導が可能であることが確認された。本細胞と、正常ラインから誘導された内耳細胞を比較検討することで、今後の研究が順調に進められると考えられる。また、正常ラインにおけるDFNA5の発現誘導、タンパク合成後の切断などの現象などの基礎的なプラットフォーム作成が2018年度に終了した。このため、予定通り、今後のこの系を用いたDFNA5変異の細胞に与える影響を解析することが可能であり、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
正常ラインにおけるDFNA5の発現誘導、タンパク合成後の切断などの現象などの基礎的なプラットフォーム作成が2018年度に終了した。今後、この系を用いて、DFNA5の変異が細胞生物学的に、どのような変化をもたらすかを検討する。具体的には、正常細胞由来内耳細胞と同様に、DFNA5変異内耳細胞に細胞ストレスXを加え、発現量に変化がみられるか、細胞ストレスに対する脆弱性がどのように変化するか、また、正常細胞にみられたタンパクレベルでの切断が影響されるかについて検討を加える。
正常細胞と変異細胞の間で違いがみられた場合、それが、難聴の原因を説明しうる可能性が高かった場合は、2019年度の実験計画通り、薬剤スクリーニングを試みる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度予定の実験計画が順調に進んだため消耗品費を減少させることが可能であった。 2019年度は薬剤スクリーニングを予定しており、次年度使用額と合わせてより規模の大きい薬剤スクリーニングを展開する。
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