2018 Fiscal Year Research-status Report
アデノ随伴ウイルスの内耳局所投与による前庭器官を標的とした遺伝子治療法開発
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18K16858
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
岡田 弘子 順天堂大学, 医学部, 助教 (20433774)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝性難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性高度難聴の発症率は1,000人に1人の割合であり、その約半数は遺伝子の関与があるといわれている。遺伝性難聴の中でも最も頻度が高い原因遺伝子は、ギャップ結合蛋白であるコネキシン26をコードしているGJB2遺伝子である。先天性高度難聴児は幼少児期に末梢平衡機能にも障害を伴う頻度が極めて高いことが知られている。また、遺伝性・加齢性・薬剤性・ウイルス性などによる平衡機能障害においては、前庭有毛細胞の損失がみられることが報告されている。コネキシン26は、蝸牛外側壁線維細胞とコルチ器支持細胞に発現するが、前庭器官(半規管・耳石器)にも免疫組織学的に存在していることが報告されている。研究代表者は、ヒトで証明された優性阻害効果を認めるR75W変異を有するGjb2マウスモデルおよびGjb2コンディショナルノックアウトマウスを作成・維持し、これまで特に前庭に関与する病態を解析してきた(Okada, J Otol Rhinol, 2015)。本課題では、前庭器官と蝸牛を共に標的としたGjb2遺伝子治療ベクターの投与法の開発および遺伝子治療後の前庭器官の機能的解析により、研究代表者が開発した前庭へのアデノ随伴ウィルスによる遺伝子導入法(Okada, Otol & Neurotol, 2012)を最適化し、前庭を標的とした遺伝子治療法を確立する。本年度は半規管からのアデノ随伴ウィルス(AAV)の投与法の検討を行った。マウスGjb2遺伝子を搭載したAAVを後半規管に設けた小孔に、微細チューブを挿入する方法を検討した。従来の正円窓投与は0.5マイクロリットル程度の投与量であったが半規管投与では約5マイクロリットルのウィルス液を投与し閉創することが可能であり、手術による聴力低下は見られなかった。今後は同方法により現在開発中の新型AAVベクターの投与を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内耳へのウィルス投与法、特に半規管経由のAAV投与を安全に実施することが可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の内耳へのウィルス投与法検討の結果、従来の正円窓投与は0.5マイクロリットル程度の投与量であったが半規管投与では約5マイクロリットルのウィルス液を投与し安全に閉創することが可能であり、手術による聴力低下は見られなかった。今後は同方法により現在開発中の新型AAVベクターの投与を行う予定である。
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Causes of Carryover |
施設移転のため、予定していた遺伝子治療実験の対象となるマウスの繁殖が進まず、それに伴い消耗品の消費が少なくなった。今後は新施設でのモデルマウスの作出状況に応じて遺伝子治療実験を再開し、関連する消耗品の購入に使用する予定である。
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