2019 Fiscal Year Research-status Report
熱傷後喉頭組織線維化の組織学・分子生物学的解析とTGF-β阻害薬の治療効果の検証
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18K16875
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 拓 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50779808)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱性喉頭粘膜障害 / TGF-β / TGF-β阻害薬 / サイトカイン / 熱傷 / 気道狭窄 / 喉頭狭窄 |
Outline of Annual Research Achievements |
機序の解明:喉頭粘膜の炎症や外傷、熱傷などによる喉頭瘢痕・線維化は、臨床において非常に治療に難渋し、音声や気道管理面で著しくQOLを損なう病態である。そこで、喉頭瘢痕形成予防や治療法の開発が求められている。これまでの研究成果をもとに、熱性喉頭組織障害の線維化における経時的な組織学的変化・免疫組織学変化・分子生物学的なメカニズムの更なる解明や治療介入による効果の検証を行うことを目的に、動物モデルを作製し、上皮、筋組織、軟骨組織、膠原繊維や弾性線維などの組織学的解析と炎症細胞浸潤のなどの免疫組織学的解析および炎症性サイトカインなどの分子機構の分子生物学的解析を行うことにより、機序の解明を目的とする。 治療効果の検証:熱傷モデル喉頭では、急性期・慢性期にTGF-βの増加がみられ、TGF-βを抑制することが線維化・瘢痕形成抑制効果に繋がる可能性が期待できる。臨床応用可能な治療として、TGF-β阻害薬や類似薬物の投与による線維化抑制効果を検証することを目的とする。 臨床への応用:研究成果をもとに、ヒトの喉頭瘢痕治療への応用をすすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喉頭熱傷障害モデル作成の適切なタイムポイントとして、control、Day3、Day7、Day28で再現性が得られた(n=6)。 組織学的解析として、HE・AB・EVG染色では、上皮・筋肉・軟骨・膠原繊維の変化の概要が再現性をとれて観察できており、今後学会等で各タイムポイントにおける喉頭組織の変化の概要について発表を検討している。評価方法としては、健側/患側における各組織の面積比として各タイムポイントで計測した(解析ソフトとして、image Jを使用)。各個体による測定誤差を少なくするため、披裂部における3スライスの平均値を算出し、control群と比較した。 免疫組織学的解析としては、CD3、MPO、CD68を用いて、組織学的解析と同様に評価を進めている。 分子生物学解析については、RT-PCRにて、control群と比較して、炎症性マーカー(IL-1b/IL-6)のDay3、Day7での有意な上昇、線維化マーカー(Pdgfa)のDay3、Day28での有意な上昇、ターゲットであるTgfb1のDay3での有意な上昇、Tgfb1rのDay3、Day28での有意な上昇が判明した。 上記結果に基づき、治療ターゲットとなるTGF-β阻害薬の選定を行っていたが、現在入手困難であったため、TGF-β阻害薬と類似機序の薬剤を選定し、薬剤の経口投与による予備実験を行った(n=3)。現段階では、組織学的解析のみに留まっているが、Day28にて筋組織の有意な再生を認め、瘢痕組織の有意な抑制効果を認めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、当初の予定通りと考えている。TGF-β阻害薬と類似機序の薬剤投与による予備実験の結果を免疫組織学的解析・分子生物学的解析でも確認し、来年度中には本実験に移行してTGF-β阻害薬と類似機序の薬剤投与による治療効果の検証を継続していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果につき、学会発表にて発表予定であったが、新型コロナウイルス感染症に伴う学会中止により、旅費等の支出が減った。そのため、次年度使用額が生じてしまった。 現時点では、学会開催再開見込みは確実ではないが、次年度使用額および翌年度予算にて研究を進めていくとともに、本年度研究成果につき将来的に学会発表・論文発表等を行っていく予定である。
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