2018 Fiscal Year Research-status Report
3Dスキャナーを用いた顔面神経麻痺後の顔面拘縮の評価方法と治療方法の開発
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18K16892
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
東 貴弘 徳島大学, 病院, 講師 (90584144)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 顔面拘縮の評価法 / 頬の厚み |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究目的は、顔面の3Dモデルを用いて顔面拘縮で最も不快な頬部の盛り上がりの程度の評価方法を確立させることであった。そのため、健常者10例、顔面拘縮を発症し患側頬が盛り上がっている患者6例を対象に顔面の3Dモデルを作成し、頬の盛り上がりの程度を評価した。計画では健常者のみを対象としていたが、患者の頬を評価し顔面拘縮を発症した頬部がどのように変化しているか調べる必要があった。そこでまず、患者の頬の状態を患側と健側で比較した。開発した顔面固定装具を使って3Dモデルを作成し、装具上の3点を通る基準面を作製。基準面に対して垂直な平面で3Dモデルの頬を断面し、頬の厚みを測定する方法を開発した。すると、顔面拘縮を発症した患者では、患側の頬の厚みが健側と比較して厚くなっていることを確認した。そこで頬の厚みの左右差で顔面拘縮の程度が評価できると仮説を立てた。次に、患者の頬の厚みの左右差と健常者の頬の厚みの左右差を比較し、患者の頬の厚みの左右差が健常人の左右差と比較して有意に大きくなっていることを確認した。このことから、頬の厚みの左右差で顔面拘縮の程度を評価できることを明らかにした。顔面拘縮に対する一時的な治療法としてボツリヌス毒素局所投与がある。そこで、ボツリヌス毒素投与前後で、頬の厚さの患側と健側の差が有意に小さくなっていることを確認した。つまり、開発した方法でボツリヌス毒素の局所投与の顔面拘縮に対する治療効果を証明することができた。以上の結果から、3Dスキャナで作成した顔面の3Dモデルを用いて顔面拘縮の客観的な評価方法を確立させた。この結果は、平成30年顔面神経学会で報告した。また、続報を令和元年の顔面神経学会で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の目標は顔面拘縮の評価方法を確立させることであった。顔面拘縮を発症した患者6例の頬の盛り上がりを患側と健側で比較し、患側の頬の厚みが大きくなっていることを明らかにした。そこで、頬の厚みの患側と健側の差をもって顔面拘縮の程度を評価できるのではないかと考えた。顔面拘縮を発症した症例の頬の厚みの患側と健側の差は5.6mm。一方健常人10例の頬の厚みの左右差の中央値は0.7mmであった。健常人の頬の厚みの差と比べると、顔面拘縮群で頬の厚みの差が有意に大きいことがあきらかになった。またこの方法を用いて、4例の患者の顔面拘縮に対してボツリヌス毒素の局所投与による治療効果を評価した。治療前と比較し治療後は頬の厚みの差は有意に改善していた。また視診上の顔面拘縮も改善していた。以上のことから、顔面拘縮の程度を評価できることがあきらかになった。予定通り顔面拘縮の評価方法を開発し、この方法でボツリヌス毒素の局所投与による治療効果も証明することができた。予定では、鼻唇溝の深さの患側と健側の比を用いて評価する予定であったが、健側の鼻唇溝の深さ(頬の厚み)が想定していたより値が小さく、健側を分母とし比を計算すると過剰に評価しばらつきが大きくなりすぎたため患側と健側の差を用いて評価することとした。予定していた評価法を少し変更したが、評価方法を決定したこと、その評価法を用いてボツリヌス毒素治療の効果を評価できたことから研究は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は予定通り、顔面拘縮に対するボツリヌス毒素単独治療群とボツリヌス毒素・触覚フィードバック療法群の治療効果を証明する。両群ともに10例を目標とする。治療には約1年間必要であるために、今年度中に治療を開始した症例を対象に来年度に治療効果を判定する予定である。研究結果を令和元年の顔面神経学会で報告する予定である。来年度は、治療後に触覚フィードバック療法を中止する群と継続した症例で長期成績を検討する。また、中止する群では顔面拘縮が再発するかを明らかにする。また、顔面神経麻痺後に顔面拘縮が発症してから本治療の開始するまでの期間が治療効果に与える影響を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
筋電計を購入予定であったが、教室保有のものを使用できたため。また、前もって購入していた3Dモデルを解析するためのソフトである3DReshaperを使用していたが、解析用パソコンの機能の問題、症例数の増加などにより解析に時間がかかり研究の進行に影響を与えるため、より高性能な解析用パソコンと解析ソフト3Dreshaperを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)