2020 Fiscal Year Research-status Report
機能性リンパ球を標的としたシラカバ花粉症の新規治療戦略
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18K16898
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山本 圭佑 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50738515)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 濾胞ヘルパー T (Tfh) 細胞 / 制御性 B 細胞 / Tfh2 シフト / シラカバ花粉症 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、シラカバ花粉症の病態における濾胞ヘルパー T (Tfh) 細胞と制御性 B 細胞の役割を明らかにすることで、未だ対症療法しか存在しないシラカバ花粉症の新規診断・治療法の開発を目指して研究を遂行している。これまでに以下の内容を明らかにした。 1.シラカバ花粉症患者では末梢血中で Tfh 細胞サブセットの 1 つである Tfh2 細胞が健常者と比較して増加していた。Tfh2 細胞がシラカバ特異的 IgE 抗体の産生に重要な役割を担っており、病態の中心となっていると推察される。2.ダニアレルギーに対するアレルゲン免疫療法を 12 か月継続した時に患者血液中の Tfh2 細胞が減少し Tfh1 細胞が増加することを発見した。アレルギー性鼻炎の病態に関与する “Tfh2 シフト” が是正されるためには最低 12 か月以上のアレルゲン免疫療法が必要であると考えられた。3.アレルゲン免疫療法を行うと 6 か月目で患者血液中の制御性 T 細胞が増加していた。4.アレルゲン免疫療法 6 か月目で患者血液中の制御性 T 細胞とTfh2 細胞は有意な負の相関を認めた。5.アレルゲン免疫療法 3 か月目で患者血液中の制御性 B 細胞とダニ抗原特異的 IgE 値は有意な正の相関を認めた。6.アレルゲン免疫療法 3 か月目で患者血液中の制御性 T 細胞と血液中 Tfh2 細胞と Tfh1 細胞の割合の比 (Tfh2/Tfh1) の間に有意な負の相関を認めた。7.アレルゲン免疫療法長期継続例で、患者血液中の PD-1 陽性 Tfh 細胞の割合が治療開始前と比べて増加していた。PD-1 陽性 T 細胞は免疫的疲弊・老化に関与する細胞として考えられており、アレルゲン免疫療法のメカニズムに活性化 T 細胞の疲弊・老化促進が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレルゲン免疫療法の長期継続例の観察を行い、患者末梢血中の Tfh2 シフトの是正が 12 か月目に明らかに観察されること、アレルゲン免疫療法の継続によって免疫反応のブレーキである制御性 T 細胞を増加させていること、制御性 B 細胞が抗原特異的 IgE 産生を制御している可能性があることを明らかにした。さらに興味深いことにアレルゲン免疫療法と活性化 CD4 陽性 T 細胞の疲弊・老化との関係を示唆する研究結果が得られた。これらの結果は、シラカバ花粉症の病態解明と新規診断・治療法の開発に向けて重要な知見と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.シラカバ抗原暴露による Tfh 細胞の活性化機構の解析 シラカバ抗原存在下で単離したヒト扁桃リンパ球または末梢血単核球由来の活性化 T 細胞とB 細胞の共培養を行い、抗原特異的 IgE の産生を確認する。同様の系で T 細胞の活性化分子である ICOS や PD-1 の中和抗体による、IgE 抗体産生の変化を検討する。さらにアレルギー性鼻炎モデルマウスを用いた動物実験で同様の変化が見られるかを観察する。 2.活性化 PD-1 陽性 Tfh 細胞のトランスクリプトーム解析とパスウエイ解析 アレルゲン免疫療法症例と年齢を一致させた健常者群の血液から活性化 PD-1 陽性 Tfh 細胞 (CD3+CD4+CXCR5+PD-1hi) をセルソーターで単離してトランスクリプトーム解析を行い、両群の Tph 細胞の転写物の比較検討を行う。発現量に差のある候補分子に関してタンパクレベルでの発現量をフローサイトメトリーや ELISA 法などで検証する。 3.Breg 細胞の分化誘導機構の解析 花粉飛散期における Tfh 細胞の活性化の抑制を確固たるものにするためには、アレルギー性鼻炎患者で減少している Breg 細胞の数とその機能維持が極めて重要と考えられる。そのためには Breg 細胞の分化誘導機構の解明が必要であり、我々は患者末梢血から Breg 細胞を分離して RNA シークエンスにて未だに不明な表面抗原やマスターレギュレーターの検索を行う。得られた結果をもとにヒト扁桃または末梢血由来のナイーブ B 細胞にレンチウイルスを用いて関連遺伝子を導入し、Breg 細胞の分化誘導を試みる。この実験系を利用して Breg 細胞の分化や増殖を促進するようなサイトカインや化合物の検索を行い、候補が同定された場合は既存薬ライブラリーを用いたスクリーニングを行い、予防薬・治療薬の探索を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が引き続く中で学会参加の機会がなく、旅費の支出がなかったため、当該年度での使用額が少なくなった。次年度の学会参加や論文の校正費用などへ支出予定である。
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Research Products
(4 results)