2018 Fiscal Year Research-status Report
高度前庭障害に対する多能性幹細胞を用いた細胞移植治療の開発
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18K16903
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
阪上 雅治 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (50745437)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ES細胞 / 内耳有毛細胞 / 内耳再生 / 分化誘導 / マウス / 前庭 / 高度前庭障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性的な前庭機能障害では、めまい・歩行障害等の臨床症状は中枢での代償機構により症状が緩和される。しかし、高度前庭障害においては、前庭代償不全によるめまい・歩行障害等の症状が持続するにもかかわらず、確立された治療法は未だ存在せず、新規治療法の開発が求められる。本研究計画では、多能性幹細胞であるES細胞から内耳前庭有毛細胞への分化過程を解明し、高度前庭障害に対する細胞移植治療法の基礎的研究を目的とした。本年度(平成30年度)は、前庭有毛細胞への効率的分化誘導法の確立とその特性解析を目標に、以下の項目を実施した。 〇有毛細胞の発生・分化の鍵となる転写因子Math1の発現と連動してGFPを発現するES細胞株(Math1-GFP ES細胞)を用いて、前庭有毛細胞への効率的分化誘導法をスクリーニングした。培養液、添加因子、共培養あるいは培養環境を組み合わせることで最適条件を検討した。共培養系と組み合わせることにより、フローサイトメトリーの成績からも、個々の細胞の分化誘導が亢進していることが実証できた。本年度に、これらの成績を取りまとめ、学会発表を行った。 ○マウス内耳より単離した培養前庭細胞の培養上清を用いてMath1-GFP ES細胞を分化誘導し、有毛細胞特異的な抗原を免疫染色、あるいはリアルタイムRT-PCRにより精査し、タンパクレベル、遺伝子レベルでの発現を解析した。現在、本内容に関する論文を作成中である。 以上の検討により、多能性幹細胞から内耳前庭有毛細胞への分化誘導法を確立し、次年度以降、細胞移植治療法の基礎的検討を進めてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、順調に実験成果が得られており、学会発表および論文発表での成果報告を行っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成31年度)の研究計画として、以下の項目を検討する。 〇前年度(平成30年度)に行った分化誘導条件を更に細かく検討する。現在までに得られている培養条件の再現性を確認しつつ、更に培養環境の最適条件をスクリーニングすることで、より効率の良い前庭有毛細胞への分化誘導法を見出す。有毛細胞特異的な抗原を免疫染色、あるいはリアルタイムRT-PCRにより解析し、電子顕微鏡による微細構造解析や電気生理学的解析を行うことで、機能性を保有した有毛細胞に分化誘導されているかを検証する。 〇カナマイシン処理した前庭障害モデルマウスから前庭を単離培養する。この培養前庭にMath1-GFP ES細胞より分化させた前庭有毛細胞様細胞を移植し、培養する。この方法により、移植細胞を蛍光実体顕微鏡観察によるリアルタイムイメージで追跡し、細胞移植した前庭有毛細胞様細胞の細胞動態を詳細に解析する。 〇前庭障害モデルマウスへの前庭有毛細胞様細胞移植を行い、移植細胞の動態追跡と前庭機能解析により、in vivo移植による基礎的検討を進めていく。
上記研究成果を取りまとめ、逐次、学会、論文発表する予定である。
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Causes of Carryover |
小備品として倒立デジタル顕微鏡システム老朽化に伴うシステムアップに必要な経費を計上していたが、本年は現行システムで実験遂行可能であったため。H31年度小備品費として消耗品費と合わせて計上する予定である。
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