2018 Fiscal Year Research-status Report
In vitro studies on the action mechanism of grafted nasal mucosal cell sheet
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18K16907
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
葛西 善行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60813889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞シート / 中耳再生治療 / 作用機序の解明 / in vitro実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療は、機能が失われた組織を補填する新しい治療法として注目されている。中でも細胞を培養して作製する細胞シートは、さまざまな部位へ臨床応用されている。例えば、30%以上再発するとされる癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎の術後に鼻腔粘膜細胞シートを移植すると、含気化が進み、再発防止に良好な経過が得られている。しかし、治療途中の再生組織を繰り返し採取することが困難であるため、移植された細胞シートの挙動や機能の解析が進んでおらず、作用機序が正確に決定されていない。 移植後の鼻腔粘膜細胞シートは、硬い骨の環境下に対応し、中耳粘膜のようにガス交換機能や鼓膜の癒着防止などを果たすという効果が期待されている。このような作用機序は再生医療全体の課題である。 作用機序解明にアプローチするには、移植後の細胞シートを回収して遺伝子やタンパク質を網羅的に解析することが重要であると考えられるが、生体から再生組織を採取することが困難であるため、解明されていない。したがって、解明をめざす第一段階として、in vitroで細胞シートを接着させて表現系を解析し、鼻腔粘膜細胞シートが環境にどのように対応するかを調べることが重要である。 そこで本研究では、細胞シート接着後の作用機序解明をめざし、基礎的に多くの解析ができるin vitro実験からアプローチする。また、得られた知見から、複数種類の細胞シートを組み合わせて、細胞シートの効果を向上させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鼻腔粘膜細胞シートは先行研究である表皮細胞シート接着(Kasai Y, et al., FEBS Open Bio, 2017)と同様にコラーゲンコートインサートやコラーゲンゲルに接着・培養させることができ、予備実験に成功してきた。この接着後の挙動を、経時的に、かつ複数条件で調べるためには、安定して数十枚の細胞シートを作製する必要がある。 現在までに行われてきた臨床研究では、基礎培地に「ヒト自己血清」を加えており、5 mm角程度の鼻粘膜から直径1.5 cmの細胞シートを10枚程度作製することに成功してきたが、患者への負担を考慮し、本研究ではFBS含有培地で研究を進めた。FBSのロットチェックも行った後に鼻腔粘膜組織のエクスプラント培養を行ったが、ヒト血清含有培地よりも増殖性が低下し、安定して作製できる細胞シートは3枚程度であった。そこで、エクスプラント培養時のFBS含有培地に、Rhoキナーゼ阻害剤であるY27632を添加させると、増殖性が著しく向上し、十数枚程度の細胞シートを作製できる細胞数を確保することに成功した。 次にこの得られた細胞を継代して細胞シートを作製すると、Y27632の細胞の弛緩剤としての作用も働いてしまい、強度が低下し、細胞シートの回収が困難であった。そこで継代後のY27632の濃度および抜くタイミングについて条件を最適化させた。最終的に、数十枚の細胞シートを安定して作製することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規作製方法で作製した数十枚の細胞シートにおける各足場における接着性を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、隙間なく接着していることを確認する。また、接着後は培養を行い、位相差顕微鏡でタイムラプス撮影をし、細胞の遊走、増殖、被覆面積などを定量化する。さらに、接着後の細胞シートからRNAを抽出し、cDNAライブラリーを作製した後、接着前後の細胞シートのトランスクリプトーム解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)常時使用する培養試薬や学会の旅費については他プロジェクトとも併用したため、支出が抑えられた。
(使用計画)タイムラプス位相差顕微鏡を他研究費と合算で購入する。
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