2020 Fiscal Year Annual Research Report
In vitro studies on the action mechanism of grafted nasal mucosal cell sheet
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18K16907
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
葛西 善行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60813889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞シート / 中耳再生治療 / 作用機序の解明 / in vitro実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞シート接着後の作用機序解明を目指し、基礎的に多くの解析ができるin vitro実験からアプローチした。まずは、安定して細胞シートを作製する条件を検討した。培地は、上皮細胞の培養に広く使われている上皮増殖用培地を用いていたが、鼻腔粘膜組織をエクスプラント培養して得られる細胞数は、平均で細胞シート約4枚分程度であり、経時的な変化や 条件ごとの詳細な解析をすすめる上で不十分であった。そこでRho kinase inhibitor (ROCKi)を添加すると、平均で細胞シート約19枚分の細胞数が確保され、十分量の細胞数が確保することができた。得られた細胞は、温度応答性培養皿上に播種してシート化させるが、ROCKiが副次的に持つミオシンのリン酸化阻害作用も働いて細胞間接着が低下し、細胞シートに穴があく問題点が浮上した。そこで、ROCKi添加培地にCa2+を添加してミオシンのリン酸化を補填させると、細胞間接着強度が増し、細胞シートとして回収することができた。次に、この細胞シートをコラーゲンゲル上に接着させて1週間培養して面積を測定すると、従来法で作製する細胞シートの3倍もの面積を覆っていた。この挙動は、生体の上皮組織の創傷治癒挙動に類似しており、この作用は従来法で作製する細胞シートよりも、高い効果を示すと考えられた。 これらの結果により、鼻腔粘膜細胞シートはROCKiとCa2+の組み合わせは、上皮細胞シートの枚数を増加させるとともに、性質も向上させる培養条件を確立することに成功した。さらに、接着後初期の細胞シートは創傷治癒に働く可能性が高まり、作用機序の一部を解明できたと考えられる。これらの結果は、学術論文として報告した(Kasai Y, et al. Sci Rep, 2020)。
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