2019 Fiscal Year Research-status Report
網脈絡膜組織に対する網膜色素上皮由来胎盤成長因子の保護効果
Project/Area Number |
18K16915
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安藤 亮 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (60399847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 眼細胞生物学 / 胎盤成長因子 / 糖尿病網膜症 / 加齢黄斑変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎盤成長因子(placental growth factor, PlGF)は血管新生や血管形成に関与する血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)ファミリーの一員である。近年、VEGFファミリー分子の持つ組織保護作用について認識が深まりつつあるが、PlGFの生理的作用は未だ不明である。本研究の目的は、網膜の恒常性維持に重要な働きをする網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelium, RPE)、およびその周囲組織に対するPlGFの生理的役割を調べることである。 昨年度までに、PlGFがVEGF受容体(VEGFR)-2蛋白を安定化し、VEGFによるRPE細胞保護効果を支える働きを有することが明らかになっている。蛋白の安定性には、リソソームやプロテアソーム系などの蛋白分解機構が関係している。本年度の研究により、PlGFを抑制したRPE細胞では、分解系への蛋白輸送に重要なユビキチン化を制御するglycogen synthase kinase 3 (GSK3)の活性を負に制御するser21/9のリン酸化が減少し、GSK3活性が亢進することが明らかになった。一方、同細胞にPlGFを添加するとGSK3のリン酸化が増加し、GSK3の活性抑制が認められた。さらに、PlGFを抑制したRPE細胞にGSK3阻害剤であるCHIR99021を添加するとVEGFR-2蛋白量は増加し、親株RPE細胞においてGSK3をアクティベーターであるsodium nitroprusside (SNP)で活性化するとVEGFR-2蛋白量が減少した。これらの結果により、PlGFによるVEGFR-2の安定化にはGSK3が関与することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画のうち、「PlGF抑制RPE細胞におけるVEGFR-2の蛋白レベルでの減少の機序解析」については終了し、検討により学術的意義のある結果を得ていることから、おおむね順調に研究は進展していると自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、PlGF抑制RPE細胞において、GSK3活性化によるVEGFR-2蛋白の減少に対してプロテアソーム阻害剤(MG132)、リソソーム阻害剤(バフィロマイシンA1)による分解系阻害が及ぼす影響の解析をおこなう。さらに、PlGFによるGSK3活性の抑制について詳細にその分子機序を解析する。
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Causes of Carryover |
理由:令和元年度の研究計画はPlGFによるVEGFR-2安定化の機序の検討であったが、順調に研究が行われ、予定よりも低額の研究費で計画遂行が可能であったため。 使用計画:令和2年度に計画している、PlGFによるGSK3活性の抑制を介したVEGFR-2安定化の詳細な分子機序の検討に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)