2018 Fiscal Year Research-status Report
末梢血中を循環するfibrocyteの緑内障術後創傷治癒への関与の解明
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18K16929
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小島 祥 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80632661)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体イメージング / 炎症反応 / MCP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トラベクレクトミー後の創傷治癒過程におけるfibrocyteの関与を明確にし、線維化の過程での役割を明らかにすることである。平成30年度はまず、本研究の解析方法のひとつとなる2光子顕微鏡を用いた生体眼イメージングにより、炎症反応/炎症細胞の動きの可視化に取り組んだ。 我々の施設では、房水内のMCP-1濃度が高い症例でトラベクレクトミーの術後成績が不良であることを明らかにしており、その過程としてトラベクレクトミー後の濾過胞周囲組織の創傷治癒にMCP-1が強く関与していることを臨床研究で示している。そこでまず、結膜及び結膜下組織において主に単球系細胞にeGFPが発現するLysozoymeM(LysM)プロモーター下eGFP発現トランスジェニックマウスを使用した生体眼イメージングで、MCP-1負荷によりLysM-eGFP細胞の動きが活発になることを明らかにした(LysM-eGFP細胞速度 : 7.91±4.13μm/min)。次に抗炎症効果が期待されているリパスジルをMCP-1負荷前に眼表面に浸すことで、MCP-1単独負荷で活性化された細胞の動きが有意に抑制されることを明らかにした(LysM-eGFP細胞速度 : 2.44±1.22μm/min, p<0.05)。この実験結果については第123回日本眼科学会総会の一般演題に採択された。 結膜及び結膜下組織中の炎症細胞の動きを生体眼イメージングで可視化し、さらに薬剤がその反応を抑制することまで確認した一連の結果は、本研究の最終目標となるfibrocyteの創部への遊走や創傷治癒過程への関与の検証に繋がる重要な成果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を遂行するにあたり、マウス抹消血中のfibrocyteを含むPBMCsが多量に必要となる。マウスの末梢血からのPBMCs単離作業は順調に進んでいたが、採取した細胞を保存していたフリーザーの故障によりストックしていた細胞の一部が使用困難となった。PBMCsの単離作業は再開したが、マウスの成長の兼ね合いもあり、当初の予定よりも進行が滞ってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス末梢血からfibrocyteを含むPBMCsの単離を行い、PBMCs中のfibrocyteの割合を、fibrocyteのマーカー(CD34, CD45, I型コラーゲン)に対する組織免疫染色とフローサイトメトリー法で確認する。トラベクレクトミーを施行した野生型マウスにグリーンマウスから単離したPBMCsを静注し、組織免疫染色で遊走してきたGFP陽性PBMCsの数と局在、αSMAの発現を観察する。さらに2光子顕微鏡を用いた生体眼イメージングにより、結膜創部におけるfibrocyteの浸潤や挙動の観察し、fibrocyteの遊走への関与も示唆されているMCP-1の影響についても検証する予定としている。以上の方策で、トラベクレクトミー術後の創傷治癒過程における末梢血液循環中のfibrocyteの関与を明らかにし、MCP-1の影響も含めた線維化の分子メカニズムの解明を最終目標とする。
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