2019 Fiscal Year Research-status Report
水素投与によるマウス未熟児網膜症の改善効果および血管内皮前駆細胞の動態の検討
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18K16937
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中川 喜博 東海大学, 医学部, 講師 (20459465)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 未熟児網膜症 / 水素水 / 酸素誘発網膜症 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は本研究目標の一つである、マウスへの水素水の投与方法について研究を進めた。 網膜症は眼内での病変であるので、まずは水素水を直接眼内に注射する方法を試みた。ROPマウスの生後15日目(P15)において、片眼に生理食塩水(NS)を、もう片眼にはNSを元に作成した水素水(H2)を注入した。 P17において眼球を摘出し、網膜伸展標本を作製し、isolectin B-4により網膜血管を蛍光染色した。蛍光顕微鏡下で撮影した網膜標本には、注射時の穿孔痕がみられ、同部位に血管異常がみられた。ROPとしての血管の評価に偏りが生じると判断し、別の投与方法に変更した。すわなち、眼表面である結膜下への注射である。結膜下は眼内よりも注入量を多くできるため、各眼20μlずつ投与した。同様にP15 で投与し、P17において網膜血管を蛍光染色した。撮影した網膜血管は、網膜症の程度を示す無血管野(avascular are: AVA)と、病的新生血管の範囲(neovascular area:NVA)について画像解析ソフトを用いてピクセル数で解析した。 結果、H2投与群において、AVAはNS投与群に比べ有意に少なかった(ピクセル数±標準偏差、NS: 22,750±1,084, H2: 16,145±1,583, P<0.01)が、一方でNVAは有意に多かった(NS: 181±124.5, H2: 399±139.7, P<0.01)。無血管野が減少する点ではOIRの改善効果と判断できるが、病的血管が増えたことについては悪化とも解釈できる。そのため、さらなる検討が必要であるが、いずれにしてもマウスOIRにおいて水素投与は網膜血管新生を促進させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
しかるべき技術職員がおらず、実験の準備や結果の解析に時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で得られている結果の解釈について注意すべき点がみつかった。それは、網膜血管を評価する時点でのマウスの体重差である。その時点で数グラムの差があると、網膜症の程度に差が生じる可能性を指摘する既報がある。現時点ではそのバランスを補正して検討できておらず、それを解決するための研究を計画している。また、より効果的な水素水を投与するタイミングに関しても研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
前年度研究計画に遅れが生じ、その結果研究に要した費用も減ったため。 次年度は予定より多くの時間を確保できる見込みがあり、今年度遅れた動物実験や培養細胞アッセイを次年度に持ち越して行う。
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