2018 Fiscal Year Research-status Report
The roles of histone modifications in retinal degeneration
Project/Area Number |
18K16949
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩川 外史郎 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30638648)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 網膜変性 / ヒストンメチル化 / H3K27me3 / Ezh2 |
Outline of Annual Research Achievements |
視細胞変性時におけるEzh2の役割を明らかにするために、Ezh2コンディショナルノックアウトマウス(Ezh2-cKO)を作製し、視細胞の変性を引き起こすMNUを投与後、変性の進行を調べた。Ezh2は網膜発生では網膜前駆細胞の増殖や分化のタイミングの制御に関わっていることが分かっているため、成体マウス網膜でEzh2をノックアウトする必要がある。そこで、Msi1-CreER(T2)とEzh2 floxマウスをかけ合わせ、Msi1-CreER(T2); Ezh2 floxマウスを作製した。このマウスでは、Msi1を発現している視細胞やミューラー細胞でCreER(T2)が発現しており、タモキシフェンを投与することでCreER(T2)の組み換え活性が誘導され、Ezh2がノックアウトされる。8週齢のマウスにタモキシフェンを経口投与して1週間後に60mg/kgのMNUを腹腔内投与し、5日後に網膜を回収した。対照のコントロールとしてMsiCreER(T2)を有さないマウスを用いた。免疫染色法により、コントロールでは視細胞の変性に伴い外顆粒層の厚みが減少していたが、Ezh2-cKOではコントロールよりも厚みが残っている傾向があった。コントロールではマイクログリアが集積し変性した視細胞を貪食している様子が観察されたが、Ezh2-cKOでは集積は認められなかった。また、視細胞変性時にはミューラー細胞が活性化しGfapの発現が上昇するが、RT-qPCRにより遺伝子発現を調べたところ、コントロールと比較してEzh2-cKOではGfapの発現が低い傾向があり、ミューラー細胞の活性化が抑えられている可能性が示された。以上の免疫染色法とRT-qPCRの結果から、個体差があるが、Ezh2-cKOでは、ミューラー細胞やマイクログリアの活性化および視細胞の変性の進行が抑えらえている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MNU投与による視細胞の変性状態が個体間でばらつくことがあり、投与量や投与時期および解析時期の最適化が必要と考えられ、現在検討中である。また、Msi1-CreER(T2)マウスやEzh2 floxマウスの繁殖があまりよくなく、Ezh2-cKOマウスの作製までに想定以上に時間がかかってしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
MNUの効果にばらつきが生じており個体差が大きい。現在、投与量や投与時期および解析時期の最適化を行っている。個体差が少ない条件を決め、Ezh2-cKOでの表現型を確定する。どうしてもばらつきが小さくならない場合は、ヨウ素酸ナトリウムなど、視細胞変性を引き起こす別の薬剤の使用を検討する。表現型が確定したら、視細胞変性時にEzh2がどのような分子機構で発現制御に関与しているかを明らかにする。具体的には、RNA-seqやChIP-seqにより、Ezh2-cKOで発現が上昇しかつプロモーター領域におけるH3K27me3レベルが減少している遺伝子をEzh2の標的遺伝子として抽出し、Ezh2の結合などさらなる検証を進める。表現型が見出されない場合は、H3K27me3に対する脱メチル化酵素であるJmjd3やUtxのfloxマウスで同様にcKOを作製し、視細胞変性時における表現型を検討する。
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Causes of Carryover |
解析に用いるマウスの繁殖が予想よりよくなく解析個体数が予定より少なくなってしまったため、実験に使用する試薬類の費用が少なくなり次年度での使用額が生じた。また、個体間の差が大きく結果を確定することができなかったため研究を発表する機会がなかった。次年度は、当初は計画に入れていなかったマウスの作製および解析を考えておりそれにかかる試薬類として使用することを検討している。
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