2018 Fiscal Year Research-status Report
末梢毛細血管開存率の向上は移植脂肪組織容量の維持に貢献するか?
Project/Area Number |
18K16980
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 顕太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20569503)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 組織移植 / マイクロサージャリー / 脂肪移植 / 容量変化 / マイクロフォーカスX線CT / 毛細血管密度 / 血管ストレス / 血管内薬剤充填 |
Outline of Annual Research Achievements |
形成外科領域で組織移植を行う場合、術前に必要な組織の種類や量を検討し使用する皮弁の種類や採取量を決定する。組織容量の増大を目的とする場合には、他の組織と比較して吸収率が低いとされる脂肪組織を使用することが多い。しかし脂肪組織でも移植術後は体積が時間とともに変化(減少)する。ときに術前の予想と異なる体積となり、整容的や機能的に不都合をきたし追加の修正術を要する。移植脂肪組織の術後体積変化(縮小)率が改善されれば術前の術式検討は容易となり、過量な組織採取や術後追加治療の頻度が改善される可能性がある。本研究は過不足のない組織移植を行うため、移植脂肪組織容量を維持することを目的とする。そのために初年度は以下の項目を実施した。 Zucker fatty rat を用いた脂肪組織移植モデルの作成:Zucker肥満ラットは皮下脂肪組織が豊富で大きな脂肪弁を挙上することができるので、画像での観察の点でも変化率の観察の点でも優れた実験種である。このラットに対して、浅下腹壁動静脈を血管茎とした下腹部脂肪弁を用いた脂肪移植モデルを作成した。 移植組織の栄養血管への操作:移植する脂肪組織内の毛細血管へのアクセスは、組織の栄養血管である浅下腹壁動静脈である。この血管茎に対して虚血や鬱血など、組織容量を減少させるストレスを付加した。また血管にカニューレを挿入して、血管閉塞を予防する手技(組織毛細血管内への生理食塩水、抗凝固薬、血栓溶解剤の充填)、血管閉塞を促進する手技(末梢血管収縮薬の投与)を付加した。 Micro focus X線CTを用いた術後移植組織容量の計測:生体での経時的変化を観察するため適切な全身麻酔下にmicro focus X線CT装置を用いて術後の経時的な体積測定を行った。脂肪組織は周囲との境界が非常に明瞭な軟部組織影として撮影される。得られたCT画像から移植脂肪組織の体積を算出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種申請や機器の購入などの環境整備、新しい実験機器の習熟、実験者の手技の安定性などにやや時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画通り、初年度に得られた実験手技を用いて具体的に種々の薬剤による負荷を試みる。 移植脂肪容量を維持するために有効と思われる負荷:組織中の毛細血管開存率を向上させれば術後容量が維持できるという仮説を検証する。組織中の毛細血管を開存させる手段として、血管内腔を生理食塩水で満たす方法が最も原始的である。まずはその効果を検証する。脂肪弁を挙上した後に栄養動脈に生理食塩水を注入する。栄養静脈にまで生理食塩水が還流されたことを確認して血管をクランプする。一定時間の負荷を与えたのちに血流を再開し、術後の体積変化をコントロール群と比較する。続いてより積極的に血管開存に働くことが予想され、かつ臨床応用が可能な薬剤を生理食塩水に加えて投与する。抗凝固薬(ヘパリン、ワーファリンなど)、血栓溶解剤 (ウロキナーゼなど)、抗血小板薬(バイアスピリンなど)の使用を予定している。 移植脂肪容量を減少させる作用を持つと考えられる負荷:実際の医療現場で使用される頻度が高く移植組織の容量を減ずる作用を有すると思われる薬剤の投与を行う。長時間で高侵襲な手術では術中の体循環(血圧)を維持するために末梢血管収縮薬を使用する頻度が高い。これが移植組織の血流や術後容量の維持に影響するかを評価する。 移植組織中の毛細血管密度の評価:ラットの移植組織中の毛細血管密度を免疫組織学的に測定する。12週間の容量測定が終了したラットから移植脂肪組織の検体を採取し、血管茎からみて近位,中間位,遠位それぞれから組織切片を作成する。脂肪細胞をペリリピンで、毛細血管をイソレクチンで染色することにより1視野内の脂肪細胞数と毛細血管数を測定し毛細血管密度を算出する。この毛細血管密度と移植脂肪組織の体積変化率の相関を検討する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況がやや遅れているため、今年度に使用する計画であった、実験用動物(滅菌飼料を含む)や研究試薬などの消耗品費、機器のレンタル料(学内施設使用料)などを次年度に繰り越して使用することとなった。
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