2018 Fiscal Year Research-status Report
血管新生が起点となる瘢痕なき創傷治癒のダイナミズム
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18K16997
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡部 圭介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50445350)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 皮膚再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚の創傷治癒に関連して、「傷をいかにきれいに治すか(quality of wound healing)」という問題は皮膚科・形成外科領域における最大の関心事のひとつである。申請者らは、これまでに独自に開発したマウス胎仔創傷治癒モデルを用いて、瘢痕を残さない皮膚創傷治癒のメカニズムがどのように達成されるのかについて継続的に検討を行ってきた。本研究では創傷治癒過程の血管新生に注目して皮膚再生の実現を目指すものである。皮膚創傷部位の血管網を三次元的に可視化することを第一の目標として研究を進め、これまでにホールマウント免疫染色標本を用いて、その全容を可視化することがほぼ可能となった。本モデルを用いた検討を行ったところ、皮膚の再生が可能な胎生13日目までの創部においては、創傷作成後24時間という早期の時点から、創表層へ旺盛な血管新生が認められるのに対して、胎生14日目以降になると様相が全く異なり、血管の創内への侵入がほとんど認められない、という現象が再現性を持って観察されることが分かった。創傷治癒や発生過程の血管新生においてはVEGFが圧倒的に重要な役割を果たすことが知られているため、本研究の血管新生モデルでVEGFの時空間的配置がどのように変化するのかについて現在検討を行っている。in situ hybridizationによってVEGFの発現が胎齢ごとに創部でどのような配置がなされているかについて検討を行っている。胎生13日目創部においては中央に特徴的な「胎生マクロファージ」の集積が観察されることから、本細胞が血管新生と深く関与するとの仮説をたててこれを検証するべく実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初に立てた作業仮説の検証を行い、再現性を持って有意な結果が観察されている。遺伝子発現の時空間的検討は手間と時間を要する作業であり、今後も継続的に解析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに研究を進める予定である。次年度は遺伝子改変マウスを用いた解析を取り入れ、多方面から血管新生と皮膚の再生の関連について検討していく。
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Causes of Carryover |
本研究はマウス生体を用いた実験を主体として進められるものであり、その交配や出産の状況によって進捗が前後する可能性が高いものである。前年度は手持ちのマウスを用いた地道な検討が中心となり比較的予算が抑えられたが、次年度は遺伝子改変マウスを中心に多種類の動物を扱う実験が中心となるため比較的多額の予算が必要となる見込みである。当初計画通りの配分で助成金を使用する計画に変わりはない。
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