2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト組織に存在する血管内皮幹細胞の分離及び同定に関する研究
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18K17003
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
内山 美津希 順天堂大学, 医学部, 助手 (60814506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管内皮幹細胞 / 血管再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、マウスの筋肉・肺などの組織内にある末梢血管の血管内皮細胞中に幹細胞と内皮細胞の性質を併せ持つ特殊な細胞、血管内皮幹細胞が同定された。本細胞はCD31+CD45-中に存在し、2018年に共同研究者の内藤らは新たなマーカーとしてCD157を同定した。本血管内皮幹細胞は通常静止状態にあるが血管新生時には細胞分裂を始め、血管を構築するために必要な内皮細胞を大量に供給することができる。さらにマウス下肢虚血モデルにこの細胞の移植を行うと、長時間にわたって血流が維持される血管が構築され、血流も完全に回復することが示された。この血管内皮幹細胞はマウスでは下肢筋肉組織、皮膚組織、肺、肝臓を含め全身の血管に存在し、虚血時には活性化することが明らかとなっている。本研究ではヒト皮膚組織、筋組織、脂肪組織を用いて、ヒトにおける血管内皮幹細胞の存在を探索することを目的としている。2018年に順天堂医院倫理員会の承認のもとヒト組織から血管内皮幹細胞を分離検証する臨床研究を開始した。その結果、皮膚組織8サンプル中の6サンプルからの皮膚組織のside population (SP)中に 血管内皮幹細胞のマーカーであるCD31+CD45-CD157+細胞が存在することが明らかになった。ヒト組織においても本細胞が存在するという結果は世界初での発見である。現在、本細胞を分離精製し、血管に分化することを確認するin Vitro とin vivoの実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、ヒト組織において組織血管内皮幹細胞が存在するかを確認することを目標として研究計画を立てていた。順天堂医院の倫理委員会の承認を得て、形成外科の眼瞼下垂症の手術の際に破棄される皮膚を回収し、合計8例のサンプルで検証を行った。結果、8サンプル中、6サンプルにおいてセルソーターでCD31陽性CD45陰性細胞中のSide Population細胞にCD157陽性細胞が存在することが明らかになった。本結果は、世界で初めてヒト皮膚組織においてCD157 Tissue-Resident Endothelial Stem Cellsが存在することが明らかになり、本研究は研究計画どおり順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、ヒト組織血管幹細胞の血管再生能をin vitroと in vivoで検証することを目標とする。ヒト皮膚より採取したCD157 Tissue-Resident Endothelial Stem Cellsを細胞の血管再生能を解析するため、PCR法による発現遺伝子の検討、FACS法による表面抗原の検討、また分化能にはコロニー形成法を行う。 また、移植可能な細胞数が得られたら、本細胞をヌードマウスの下肢虚血モデルに移植し、血管再生能を検証する。 現在までの研究成果により、一度の手術により採取できる皮膚では上記検証を行える十分な細胞数が得られない。そのため、in vivoにおける検証を可能にするための皮膚採取量を算出する必要がある。また、手術で皮膚を採取する日と当日に動物実験が困難であることから、本細胞の凍結方法、凍結により細胞の品質と機能評価などを行う必要性が生じた。これらを合わせて平成31年度に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの研究成果により、新たな検証および評価などを平成31年度に実施する必要性が生じた。
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