2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17015
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
菅森 泰隆 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (60814902)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨形成促進剤 / RANKL / RANK / 分泌小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、成熟した破骨細胞から分泌される小胞(脂質二重膜で形成される直径30 nm~100 nm程度の分泌小胞)に骨形成能があることが見出されている。この分泌小胞の骨形成能は可溶性RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)と混和すると大きく抑制される。この為、分泌小胞上に発現したRANKが可溶性RANKLと結合すると骨芽細胞膜上のRANKLへの結合が阻害されるために、骨形成促進能が抑制されると考えた。この分泌小胞上のRANK(receptor activator of NF-κB)が骨芽細胞膜上のRANKLを直接刺激して骨形成促進作用を発揮することはすでに明らかになっている(Ikebuchi et al Nature 2018)。 本研究の目的は、このRANKを発現する分泌小胞に似せて、骨形成を促進する人工的にRANKを搭載させた分泌小胞を創製することである。 2019年度は、RANKを搭載するための人工の分泌小胞(人工エクソソーム)の候補を複数用意し、搭載されたRANKの機能を確かめるために破骨細胞を可溶性RANKLで刺激して誘導する実験系により検討を行った。その結果は驚いたことに、RANKを搭載しない人工エクソソームを添加することによって、1視野あたりの破骨細胞数が、非添加群と比較して、1/6~1/7程度となった。また、この抑制は人工エクソソームのリン脂質濃度が高いとより強い抑制を示した。このことは、RANKを搭載しない脂質二重膜小胞が、細胞膜を主に構成するリン脂質濃度依存的に破骨細胞形成を抑制することを意味している。そのため、RANKを脂質二重膜小胞に組み入れる前に、人工エクソソーム作製に用いる脂質二重膜小胞のサイズ、リン脂質濃度、リン脂質の種類などを検討する必要性が出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RANKを搭載しない人工エクソソーム(脂質二重膜小胞)がリン脂質濃度依存的に破骨細胞形成を抑制することが新たに分かってきたので、RANKを搭載する人工エクソソーム作製の原材料となるDOPCリポソームのサイズの検討、リン脂質濃度を抑える工夫、リン脂質の種類変更など、新たに考慮すべき事項が増えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、RANKを搭載する人工エクソソーム作製の原材料となるDOPCリポソームのリン脂質濃度を抑えるために、DOPCリポソームのサイズの縮小および人工エクソソームに搭載するRANKの数を増やすことを考えている。搭載するRANKの数を増やすことに関しては、全長のRANKはサイズが大きいため、リポソーム膜への組み込み効率がさほど良くはないことが予想される。そのため、RANK全長から、RANK-RANKLのシグナル伝達を可能とする領域の特定をアフィニティアッセイ、BIAcoreを用いて行う方針である。
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Causes of Carryover |
人工エクソソームを複数回作製する必要があり、その為、人工エクソソームの有効性を確認する目的の細胞培養も頻回に行う必要があったが、2019年度は、研究代表者の所属研究機関の異動および年度末の新型コロナウイルスの流行により思う通りに実験を実施できなかった点が挙げられる。その為、2020年度の予算と合わせて、消耗品として用いる予定である。
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