2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17015
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
菅森 泰隆 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (60814902)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨形成促進剤 / RANKL / RANK / 分泌小胞 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、RANKL(receptor activator of NF-κB ligand)に結合するペプチドに骨形成促進作用がある事が示された。この骨形成促進作用の機序として、骨芽細胞膜上のRANKLが受容体として働き、RANKL結合ペプチドと結合し、骨芽細胞内に骨形成シグナルを誘導することを想定している。 また、東京大学医学部薬剤部との共同研究によって、成熟した破骨細胞から分泌される小胞(脂質二重膜で形成される直径30 nm~100 nm程度の分泌小胞)に骨形成能があることを見出された。この分泌小胞の骨形成能は可溶性RANKLと混和すると大きく抑制される為、分泌小胞上に発現したRANKが骨芽細胞膜上RANKLと結合する事で、骨形成のシグナルを誘導している事が明らかとなった(Ikebuchi et al Nature 2018)。 本研究の目的は、骨芽細胞膜上RANKLに骨形成シグナルを入れる、RANKを搭載した人工の分泌小胞(人工エクソソーム)の創製である。 これまでRANK搭載人工エクソソームの候補を複数用意し、破骨細胞を可溶性RANKLで誘導する実験系を用いて検討を行った。その実験結果の中で、RANK搭載しない人工エクソソームを添加することによって、破骨細胞形成が、非添加群と比較して、1/6程度になったものがあった。これは、人工エクソソーム作製に用いるDOPCリポソームが、細胞膜を主に構成するリン脂質濃度依存的に破骨細胞形成を抑制する可能性があることを意味する。 DOPCリポソーム自体が破骨細胞形成を障害する可能性は想定していなかった為、これまで破骨細胞形成の抑制能を有すると考えられた人工エクソソーム候補に関しても、その抑制能をDOPCリポソームのサイズ、リン脂質濃度、リン脂質の種類などの観点から、再度検証を行う必要が出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再度検証を行った結果、高濃度のDOPCリポソーム(人工エクソソームの原材料)は破骨細胞形成を障害すると考えられた。 なお、RANK搭載人工エクソソームの骨形成促進作用を検討する課題に対して、骨吸収系の破骨細胞形成系を用いる理由は、まず、無細胞系システムにより脂質二重膜上に搭載されたRANKタンパクが、RANKLと結合する機能を持つか否かを検証するためである。このため、可溶性RANKLで誘導される破骨細胞形成系を用いて、RANK搭載人工エクソソームによる抑制を観察する実験を行っている。 DOPC以外のリン脂質として、DPPCからなるリポソームにRANKを搭載することも検討したが、RANKなどの膜タンパク質の組込みには脂質膜の流動性が重要であり、DPPC では流動性がなく、組込み量が低下することが分かってきた。 その為、人工エクソソームの作製は、今後もDOPCリポソームを用いる予定であるが、その濃度を抑える工夫も含めて、京都大学 大学院工学研究科 秋吉一成教授との共同研究として進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、RANKを搭載する人工エクソソームの原材料となるDOPCリポソームのリン脂質濃度を抑える為に、人工エクソソームに搭載するRANKの数を増やすことを考えている。 搭載するRANKの数の増加に関しては、全長のRANKはサイズが大きい為、リポソーム膜への組込み効率が良くないことが予想される。RANKは細胞外ドメイン、細胞質ドメイン共に大きな膜タンパク質であることが分かっており、人工エクソソーム上のRANKの細胞外ドメインがRANKLと結合することから、RANKの細胞外ドメインが破骨細胞形成の抑制、骨形成シグナルに重要であると考えている。その為、細胞質ドメインを欠失させることで小型化したminimal RANKを搭載するエクソソームを作製することで組込み率を改良し、搭載するRANK数の増加を図る予定である。さらなるRANKの小型化が必要な際はRANK-RANKLのシグナル伝達を可能とする領域の特定をアフィニティアッセイ、BIAcoreを用いて検討する。 人工エクソソーム上のRANKが機能しているかを判断するスクリーニングの手段として、破骨細胞を可溶性RANKLで誘導する実験系を引き続き活用する。この系はRANK搭載人工エクソソームがRANKL-RANK関係を阻害できるかを見ることで、搭載したRANKが機能しているかを判定できるだけでなく、実験期間が短く、使用する試薬量も少ない点も有用である。この系で破骨細胞形成を抑えるデータが得られた人工エクソソームの候補を用いて、骨芽細胞分化を誘導する実験系を行うことが次の段階となる。
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Causes of Carryover |
本研究の進捗状況に遅れが生じている為である。その原因の一つとして、2020年度は新型コロナウイルスの流行のため、思い通りに実験を実施できなかった点が挙げられる。なお、次年度使用額は消耗品に用いる予定である。
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Research Products
(2 results)