2018 Fiscal Year Research-status Report
Srcファミリー分子Hck活性化による軟骨細胞の増殖・分化制御機構の解明
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18K17017
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松裏 恵子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特任研究員 (20770423)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Hck / 間葉系細胞 / 軟骨細胞の増殖・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室で、Runx2ノックアウト(ko)マウス由来の初期培養軟骨細胞にRunx2を導入、Runx2の標的遺伝子を探索し、誘導される遺伝子の1つとしてHck (Hematopoietic cell kinase)が同定された。Srcファミリー間で一部機能的な重複があることは知られているが、Hckによって活性化される下流シグナルが、Srcファミリーで共通なのか、Hckに特徴的なものがあるのかは不明である。また、軟骨細胞でのHckに関する研究は全く報告されていない。しかし、Hckが軟骨細胞で発現していることは確認しており、生理的にも軟骨細胞増殖・分化に関与している可能性があると考えられた。Hckの軟骨細胞における機能を明らかにするために、軟骨細胞特異的に遺伝子発現を誘導するCo2a1プロモーターを用いた恒常活性型Hck トランスジェニック(Tg)マウスを作製した。Hck tgマウスの椎体、軟骨性頭蓋および四肢の長管骨では、大きな間葉系細胞塊を形成し、異常な形態をとった。その後、軟骨細胞は成熟し、内骨内骨化化によって骨に置換されていった。また、四肢、椎体、軟骨性頭蓋において、BrdUラベルにより、間葉系細胞(軟骨細胞)の増殖が促進されていることが明らかとなった。また、間葉系細胞塊を形成後、異常なコラーゲン発現をしており、Hckは軟骨細胞分化にも影響を与えていることが明らかになった。 恒常活性型Hck Tgマウスでは軟骨器質を破壊する分子も発現誘導されており、軟骨基質の破壊を誘導するシグナル経路を明らかにすることにより変形性関節症研究にも寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
組織解析は順調に終了した。Hckが増殖を促進させるメカニズムの解明のために、in vivoの表現型を再現できる軟骨細胞株の選択に時間がかかり、プロテオミクス解析まで進むことができなかった。これは次年度行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、Hckのノックダウンシステムを用い、軟骨細胞の増殖・分化に対するHck及びSrcファミリー全体の関与について解析を行っていく計画となっている。また、Tgマウスサンプルを用いたプロテオミクス解析及びトランスクリプトーム解析により、Hck活性化が間葉系細胞(軟骨細胞)の増殖を促進させるシグナル経路、及びI型コラーゲン、II型コラーゲン、オステオポンチン、Mmp13を同時発現する分子機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
組織解析および細胞株を用いた増殖実験を今年度実施したため、手持ちの試薬で実験できた。プロテオミクス解析は、次年度行うこととしたため、次年度使用額が生じた。31年度は、この次年度使用額を用いて、抗体の購入およびプロテオミクス解析を行う。また、当初31年度分として請求した助成金を使用して計画通りトランスクリプトーム解析を行う。
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