2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌を誘発する歯周病原菌の同定とその発癌への影響解析
Project/Area Number |
18K17031
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
中島 慎太郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (40817095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯周病原菌 / 口腔癌 / 細菌叢解析 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、対照群、前癌病変患者群、口腔癌患者群の唾液由来DNAサンプルを用いた次世代シーケンシング (NGS) による細菌叢解析、特定の歯周病原菌感染環境におけるマウス腫瘍形成実験およびこれまでの結果の解析と論文執筆を行なった。 NGSでは、前年度からサンプルを一部変更し、さらに新たなデータベース (Silva138) とソフトウェア (Qiime2) を用いて解析を再施行した。結果から、各群における口腔内細菌叢の多様性に大きな差は認められなかったが、それらを構成している菌属、菌種が異なることが示唆された。興味深い点として、口腔癌患者群では、他の2群と比較して患者間の菌組成類似度が低かった。また、3群間の存在比率に有意差がある歯周病原菌が複数検出された。 マウス腫瘍形成実験では、一般的にマウス・ラット口腔癌誘発モデルに用いられる4-nitroquinoline 1-oxide (4NQO) を使用し、Polymerase chain reaction法とNGSの結果から口腔癌発癌への関与が示唆された歯周病原菌の感染が、口腔粘膜病変の発症時期や悪性度に及ぼす変化を検証した。結果として、4NQO+歯周病原菌感染群では、4NQO単独群と比較し、舌粘膜病変の形成時期が早まった。さらに、実験開始から同時点における舌粘膜病変の組織像において、4NQO+歯周病原菌感染群では、異型扁平上皮細胞が結合組織内に浸潤していた。 これまでの結果から、口腔癌患者群では歯周病が進行していること、口腔癌患者群では各患者ごとに細菌叢が大きく異なること、特定の歯周病原菌の感染によりマウス口腔粘膜病変の形成が促進し、さらに悪性度が高くなることが示唆された。 今後は、この度の研究成果を論文として報告するとともに、規模を拡大した研究に着手し、口腔内細菌叢と口腔粘膜疾患の関連性をより詳しく明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本研究課題の最終年度である2020年度中に論文を投稿する予定であった。しかし、NGSによる細菌叢解析の再施行に想定以上の時間を要し、さらにCOVID-19による影響からマウス腫瘍形成実験の実施と解析に遅延が生じたため、研究課題の実施期間延長を申請した。 上記「研究実績の概要」にある通り、予定していた実験は終了し、現在は結果の解析と論文執筆を行っている。 以上の成果から、研究計画は構想時よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. NGSによる細菌叢解析の結果を詳細に解釈する。特に、今回得られた結果と先行研究との比較、解析における限界について考察する。また、今後被験者数を増やして解析する上での改善点や変更点を列挙する。 2. これまでに得られた結果と考察をまとめ、論文を投稿する。なお、当該年度までの研究成果は、第66回日本口腔外科学会総会・学術大会にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2020年度に論文の英文校正料および投稿料として使用する予定だった費用を用いなかったためである。2021年度中に、論文の英文校正、投稿や学会参加のための費用として使用する予定である。
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