2019 Fiscal Year Annual Research Report
The effects of Aromatase-Inhibitor on gingival cells.
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18K17046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷川 詩織 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (40806866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯肉増殖症 / アロマターゼ阻害薬 / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、閉経後女性を対象とする乳がん治療薬、アロマターゼ阻害薬(AI)を服用した70代女性において顕著な浮腫性の歯肉増殖を特徴とする歯周炎の一例を経験している。海外では類似症例の数例の報告がなされているが、浮腫性の歯肉増殖症の出現の報告は本邦初である。日本人女性における乳がん罹患者数は毎年増加しており、AIは乳がん治療のホルモン療法における第一選択薬であることより、今後AIの服用患者数の大きな増加が予想される。 本研究課題において、本年度は昨年度に引き続き以下の研究を実行することにより、アナストロゾールの歯肉増殖誘導機序をin vitro実験系を用いて検討した。 1) 薬剤性歯肉増殖症の発症機序の一つである細胞外基質(ECM)蓄積には、歯肉線維芽細胞(HGF)における過度のカルシウムイオンの流入及び葉酸の吸収阻害が関与するとの報告がある。そこで、アナストロゾール がHGFのカルシウムイオン細胞内取り込みに及ぼす影響について、細胞内カルシウム流入試薬(Fluo 4-M)を用いて検討した。その結果、アナストロゾール刺激によりHGFのカルシウム取り込みが有意に増強される結果が得られ、細胞内にECMが過剰に蓄積する一因となっている可能性が示唆された。 2)歯肉増殖症を発症する1つの メカニズムとして、以前より薬剤による線維芽細胞のコラーゲン貪食作用の低下が考えられている。今回、コラーゲンコートしたビーズをHGFに貪食させたところ、アナストロゾール存在下ではコントロール群と比較して有意に貪食作用が低下することが観察された。 以上の結果より、アナストロゾールがHGFに直接作用し、細胞内でのECMの代謝を阻害することで、歯肉増殖症の病態形成に関与している可能性が示唆された。
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