2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17055
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
中村 紫野 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (80782573)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / ラマンバンド / 蛍光強度 / セメント質 / 象牙質 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周炎は口腔内の歯周病原性細菌による感染症であり、歯肉や歯槽骨などの歯周組織の破壊を主とする慢性炎症性疾患である。発炎因子の代表はプラークであるが、歯肉の炎症を増悪させるプラーク保持因子とすて歯石が挙げられる。この歯石を除去する治療法がスケーリングルートプレーニングである。歯肉縁下歯石は歯周ポケット内に存在し、肉眼では発見しにくいため、歯石の探査と除去には訓練が必要とされ、必ずしも初心者が容易に行うことのできる治療とは言えない。また、歯石の除去は必要不可欠であるが、健全セメント質を除去しすぎてしまうと知覚過敏がおこるため、歯質の過度な削合は避けなければならない。しかし、術中の歯根面がセメント質であるか、象牙質まで露出したかどうかの確認方法は未だ報告されていない。これまでの研究ではセメント質と象牙質の識別方法は明らかにできなかった。本研究の目的は歯質から取得したラマンスペクトルの解析によりセメント質と象牙質の識別が可能であるか検証することである。 本研究により、非破壊でセメント質と象牙質の識別が可能となれば、経験の浅い術者が適切にスケーリンクルートプレーニングを行う際の手助けとなるだろう。また、患者にとっても無駄な歯質削除を避けることによって知覚過敏などの偶発症を防ぐことができ、重要性の高い研究と考えられる。 レーザー光の出力はラマン解析の便宜上、高値を使用しているが、実際に口腔内で行う前に、出力の適当値を決定する必要があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力に同意を得た患者から、選定条件を満たす抜去歯を30本用意した。各々の抜去歯は歯周病を理由に抜歯した歯根面に歯石が塊状に沈着している歯であり、歯髄処置や歯冠補綴がされていないものに限った。用意した30本の歯根面に、歯石沈着部位・セメント質・象牙質が含まれるように厚さ1mmのスライスを作製した。 作成した抜去歯のスライスを歯冠側から、根尖側へ0.5mm毎にラマン測定するために、抜去歯にレーザー光が垂直に入射するように設定した台座を用意した。これは後に、ハイドロキシアパタイトのラマンバンド数種類を用いて、蛍光/ラマン強度比の算出を行う際にある程度の入射角度、入射距離の補正を行うことが可能だが、それを最小限にする努力である。 本研究を行ううえで最も重要な抜去歯の収集と選定に時間を要したが、測定を行う上で必要な材料は揃っているため、今後は測定とスペクトル解析に時間を費やすことが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
準備した抜去歯のスライスのラマン測定を行い、スペクトル解析する。ラマン測定に使用する励起波長の種類は多数存在するが、そのうち頻用されているものについて数種類検討する予定である。また、取得したラマンスペクトルよりハイドロキシアパタイトのラマンバンドは既に検証済みである960㎝-1の他に、8種類存在することが分かっている。各々の組み合わせで蛍光/ラマン強度比を算出し、統計解析を行い、セメント質と象牙質の識別が可能かどうか検討する。 年度の後半はデータの整理、論文作成に取りかかる。
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Causes of Carryover |
研究がやや遅れているため、測定に必要な器具を購入していない。翌年度に購入する予定である。翌年度は測定、解析を行い、研究成果を発表する。
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