2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサーによるヒトのデンタルバイオフィルム制御へのアルギニンの効果判定
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18K17062
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
栗木 菜々子 (和氣菜々子) 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60781432)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デンタルバイオフィルム / 次世代シーケンサー / 制御 / アルギニン |
Outline of Annual Research Achievements |
オーラルバイオフィルムは齲蝕や歯周疾患に深く関与しており,全身疾患との関連においても注目されている.一般的に,感染症治療の第一選択は抗菌療法とされてきたが,このバイオフィルムは抗生物質に耐性があるため,抗生物質の使用により口腔内細菌叢のバランスが崩れるという問題点が分かってきた. 近年,唾液成分のひとつであるアルギニンは,pHを上昇させることによって,ヒトの口腔内細菌叢を変化させる効果があることより,プレバイオティクスとして注目されてきている.そこで,本研究の目的は,申請者が新たに開発したin situバイオフィルムモデルを用いて,デンタルバイオフィルムへのアルギニンの効果を経時的かつ定量的に検索する方法を確立し,アルギニン製剤がプラークコントロール法として有用か否かを科学的に検証することである. そこで,本年度は3人の被験者に対して,申請者が開発したin situバイオフィルムモデルを用いて,8%アルギニン含有歯磨剤を2週間使用する前と後で,口腔内生菌数および口腔内細菌叢が変化するのかを培養法および次世代シーケンス解析(NGS)にて定量的に比較検討した.さらに,同じ時点の唾液試料からpH測定を行った.その結果,生菌数には変化は認められなかったが,細菌叢には差異が認められた.特に,アルギニン含有歯磨剤を使用した後は,Actinomyces JVKMが有意に減少した.また,唾液中のpHも上昇傾向にあった.これより,8%アルギニン含有歯磨剤を使用すると,口腔内のpHを上昇させることによって,口腔内生菌数には影響を与えず、口腔内細菌叢のみを変化させることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,アルギニン製剤がプラークコントロール法として有用か否かを科学的に検証することである.現段階で,申請者が新たに開発したin situバイオフィルムモデルを用いて,デンタルバイオフィルムへのアルギニンの効果を経時的かつ定量的に検索する方法を確立している.さらに,申請者は次世代シーケンス解析技術を用いたバイオフィルム内の構成細菌を同定する方法を確立しているため,その16S rRNAシーケンス解析を順調に進めており, 現段階で,アルギニン含有歯磨剤使用による口腔内生菌数および細菌叢への影響を明らかとしている. 以上の研究内容は,2019年6月にカナダで行われる国際学会のInternational Association for Dental Research(IADR)で発表する予定である.今後としては, アルギニンのみを含有した洗口剤を用いて,多面的な解析を行い,デンタルバイオフィルムへのアルギニンの効果判定を行う必要性があると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は歯磨剤では他の成分が含まれているため,アルギニンのみを含有した洗口剤等を用いて,デンタルバイオフィルムへのアルギニンの効果判定を行う必要があると考えられる. 1.バイオフィルムサンプルの採取 本研究では,申請者が開発したin situバイオフィルムモデルを用いてデンタルバイオフィルムを作製し,デンタルバイオフィルムへのアルギニンの影響についての評価を行う. 被験者に関しては,大阪大学歯学部学生および大阪大学歯学部附属病院の医員から,本研究の内容を説明し,同意を得られるボランティアを募集する.サンプルの採取に関しては,申請者が開発した口腔内装置を用いて,デンタルバイオフィルムの作製を行う.洗口剤を使用する前に口腔内装置を装着し,装置中に固定したHAディスクを8時間後に採取する.その後,1カ月ほどアルギニン含有洗口剤でうがいをしたのち,口腔内装置を装着8時間後に,ディスクの採取を行う. 2.アルギニン作用によるデンタルバイオフィルムの定量的評価 上記のように試料を採取し,以下のような評価を行うことで,アルギニン作用によるデンタルバイオフィルムへの効果の定量的評価を行う.まず,ディスク上のバイオフィルムを回収し,アルギニンの生菌数への効果を評価する.また,ディスク上のバイオフィルムを共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)にて観察し,その体積や厚みに対する効果を測定し,3次元的に定量評価する.また,バイオフィルム内の局所のpHをCLSMにて測定し,バイオフィルム内のpHへの影響を3次元的に定量評価する.さらに,次世代シーケンサーを用いて,バイオフィルムを構成する細菌を同定し,アルギニンの細菌叢への影響を評価する. 以上のように,アルギニンのデンタルバイオフィルムへの効果を多面的に評価し,そのメカニズムを解明することで,アルギニンを添加した新規抗バイオフィルム製剤の創出を目指している.
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Causes of Carryover |
アルギニンの試薬が口腔内で使うことができないため,まずは市販のアルギニン含有歯磨剤の効果判定を行った.医薬品メーカー等に問い合わせをおこない,食品添加物のアルギニンであれば口腔内で用いることができることがわかったが,その調達に時間がかかった.そのため,次年度にアルギニン含有洗口剤を用いた研究を行っていく予定である.DNA抽出キットおよび次世代シーケンス解析等の物品費に約150万の支払いを行う予定である.また,本年度および次年度の研究成果を国内および国際学会で発表するため、旅費約40万の支払いを行う予定である.
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Factors that cause endodontic failures in general practices in Japan.2018
Author(s)
Yamaguchi M, Noiri Y, Itoh Y, Komichi S, Yagi K, Uemura R, Naruse H, Matsui S, Kuriki N, Hayashi M, Ebisu S
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Journal Title
BMC Oral Health.
Volume: 18(1)
Pages: 70
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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