2018 Fiscal Year Research-status Report
miR-34a-SATB2 axisによる歯根膜ステムセルエイジングの解析
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18K17064
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池上 久仁子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (80779116)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯周病 / 歯根膜細胞 / 老化 / micro RNA-34a / SATB2 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は、加齢に伴い疾患罹患率のみならず組織破壊が増悪することが知られている。一般に加齢に伴う疾患の増悪には、「細胞老化」が関与しており、ヒトの歯周組織においても加齢に伴い老化細胞の蓄積が観察されている。従って、高齢者における歯周組織の修復、治癒、再生能力の低下には、細胞老化を病因とする慢性炎症と幹細胞の機能低下、すなわち、幹細胞老化(ステムセルエイジング)の関与が示唆される。歯周組織に特徴的な組織修復・再生能の低下や治癒遷延化の分子機構を明らかにする為に、エピジェネティックなメカニズムにより慢性疾患や癌病態と個体発生を制御するmicroRNAs(miRNAs)に着目した。申請者らは、老化歯根膜細胞におけるmicroRNA-34aの発現亢進を見出し、その標的遺伝子であるSATB2(硬組織形成を促進する遺伝子)に焦点をあて解析に取り組んでいる。SATB2は、骨芽細胞への分化を調節制御するDNA結合タンパクであり、頭蓋顔面形成異常の原因遺伝子の一つであることより、ヒト歯根膜においてmiR-34aが幹細胞の自己細胞分裂能と硬組織細胞への分化制御を介して幹細胞性維持に重要な役割を担うことが予想された。本研究では、老化歯根膜細胞において発現亢進するmicroRNA-34aと、その標的遺伝子SATB2(硬組織形成を促進する遺伝子)の経路が、歯根膜のステムセルエイジングに関与しているとの仮説のもと、研究を遂行している。 研究開始初年度の平成30年は、老化歯根膜細胞において発現亢進するmicroRNA-34a-SATB2が、いかなるメカニズムで歯根膜細胞の幹細胞性を調節制御しているか解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度の平成30年は、老化歯根膜細胞において発現亢進するmicroRNA-34aとその標的遺伝子SATB2の幹細胞性の制御機構をヒト歯根膜細胞のin vitro 複製老化過程において検討した。初代ヒト歯根膜細胞の複製老化の誘導により、異なるラインの老化歯根膜細胞を得た。これら全てのラインにおいてmiR-34aの発現亢進とSATB2の発現低下を遺伝子、タンパクレベルで確認した。興味深いことに、miR-34aの発現亢進は、細胞増殖停止の前より認められた。 実際に、mimic miR-34a(hsa-miR-34aのRNA配列を模倣した人工合成oligos)、あるいはinhibitor miR-34aを遺伝子導入し、SATB2の発現量のモニタリングを行った結果、mimic miR-34aを導入した歯根膜細胞ではSATB2のタンパク発現が低下していたことから、老化歯根膜細胞においてはmiR-34aがSATB2を調節制御し、細胞分裂に関与していることが示唆された。現在、細胞調節制御タンパクに及ぼす影響を解析中である。また、正常歯根膜細胞にmimic miR-34aを導入後に、5日間硬組織分化誘導培養を行い、ALPase活性、石灰化関連遺伝子の発現を検討した。導入群ではALPase活性の低下、並びにRunx2、I型collagen、ALPase遺伝子の発現低下を認めた。miR-34a の標的遺伝子は、SATB2以外にも存在する事から、CRISPR/Cas9システムにて、SATB2を欠失させた歯根膜細胞において同様に5日間の硬組織誘導培養を行った。SATB2ノックダウン細胞株では、Runx2の遺伝子発現は低下していたことから、miR-34a-SATB2経路が歯根膜細胞の複製能・分化能に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年は、前年度に引き続き、miR-34a-SATB2によるヒト歯根膜幹細胞維持機構の解析を継続する。そして、生体での歯周組織の老化と幹細胞能におけるmiR-34a-SATB2の機能を検討する為に、老齢マウスのPorphyromonas gingivalis (P.g.)感染歯周炎モデルにおいて、老化歯根膜細胞、幹細胞の動態のin vivo解析を実施する。 顎骨のmicro CT計測後に、歯周組織切片を作製し、HE染色、老化マーカーであるSA-betaGAL、P16/INK4aと幹細胞マーカーSSEA1、CD105を用いた免疫組織学的解析により、老化歯根膜における幹細胞の動態を検討する。反対側の組織をDEPC処理し、in situ hybridization にて、miR-34a、p16、SSEA1、CD105、CD44、SATB2の発現をモニタリングすることで歯周組織のステムセルエイジングのin vivo 解析を行う。in situ 解析が困難な場合は、DEPC処理した組織或いは、組織切片より老化細胞をレーザーマイクロダイセクション法にて回収し、細胞レベルでRNAを精製し、miR-34aとP16、SATB2、幹細胞マーカーmRNAの発現をリアルタイムPCR法でモニタリングし、解析に当たる。
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Research Products
(6 results)