2018 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原性細菌による上皮間葉転換誘導メカニズムの解明
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18K17066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大嶋 淳 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (30755450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯学 / 微生物学 / 口腔細菌学 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、根尖性および辺縁性歯周炎に対する新規の創薬・治療戦略の創成を念頭に、歯周病原性細菌が上皮間葉転換(EMT)を促進させる機序について多角的な検討を行うことである。本年度はまず、主要な歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisによるEMT誘導の主要シグナル伝達経路の探索、P. gingivalisによって誘導されるEMTが上皮細胞の遊走性に及ぼす影響についての検討、そしてP. gingivalisと他種細菌との混合感染による相互作用についての検討を行った。 P. gingivalisが歯肉上皮細胞にEMTを誘導するシグナルを解明するべく、様々なシグナル特異的な阻害剤や主要遺伝子のノックダウン試薬を用いてヒト歯肉上皮細胞株を処理し、代表的なEMT関連転写因子であるZEB2の発現上昇に影響があるかどうかをリアルタイム定量PCRにて検討した。その結果、P. gingivalisによる感染はβ-カテニンシグナルを介してEMTを誘導していることが明らかとなった。また、マトリゲルインベージョンチャンバーを用いた培養による検討の結果、P. gingivalisが感染した歯肉上皮細胞では遊走能の亢進が認められた。さらに、歯肉上皮細胞をP. gingivalisと他の口腔内細菌とを同時に刺激した場合のZEB2の発現についてもリアルタイム定量PCRを用いて検討したところ、代表的な口腔常在菌であるStreptococcus gordoniiと共感染させた際にはP. gingivalisによるZEB2発現誘導が有意に阻害されることがわかった。このような阻害作用は同じく口腔内に観察されるFusobacterium nucleatumとの共感染では認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P. gingivalisが歯肉上皮に上皮間葉転換を誘導する主要なシグナル経路の同定に成功し、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、P. gingivalis誘導性EMTの主要シグナル伝達経路について、さらにその分子メカニズムの解明を目指す。具体的には、P. gingivalisによるZEB2の発現上昇を指標として、誘導機構の起始点と、ZEB2発現を直接的に誘導する転写因子の同定を目標とする。
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Causes of Carryover |
当初参加を予定していた海外学会に参加しなかったため、学会参加費と旅費が不要であった。また、シークエンス解析費用が少なく済んだため。 次年度は現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。また,国内外の学会にも参加予定である。
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Research Products
(1 results)