2018 Fiscal Year Research-status Report
type I およびtype IIIコラーゲンによる歯根膜細胞の機能・分化制御
Project/Area Number |
18K17086
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤田 和久 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (80805747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯根膜線維芽細胞 / 再生医療 / スキャフォールド / コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,歯科領域では歯牙欠損に対する治療法として審美的・機能的側面からインプラントによる治療が盛んに行われているが,感染や応力に対する抵抗性,骨成長に対する非追随性などの欠点が挙げられる.これらの外部刺激に対して,健全な歯周組織の中では歯根膜が重要な役割を担っている.歯根膜は二つの硬組織挟まれ一定の幅を保つ線維性結合組織で歯周組織の恒常性の維持を担っている.歯根膜細胞は硬組織形成能によって歯槽骨やセメント質を形成する一方で,硬組織形成を抑制し一定の幅を維持する性質をもっており,感染や応力,成長への適応力を有している.そのため歯根膜を含む歯周組織を再生するため歯根膜 細胞の接着や分化を制御する足場材料の開発が必要と考える.そこで本研究課題では,生体内の歯根膜組織に含まれるコラーゲンなど各種細胞外基質を用いて,歯周組織結合型インプラント創製のための研究基盤を確立することを目的とする. 本研究では,歯根膜組織再生を促す生体材料開発の基礎的知見の獲得のため,歯周組織に特異的に発現の向上が認められるIII型コラーゲンの機能に着目した.III型コラーゲンは,歯根膜組織やセメント質に特に多く発現し,その構造はα1鎖のトリプルヘリックス構造でα1鎖とα2鎖からなるI型コラーゲンの構造とは異なることが報告されている.我々はI型コラーゲン及びIII型コラーゲンが歯根膜由来細胞の機能発現に及ぼす影響を検討する為に,コラーゲンをコートしたハイドロキシアパタイトを作製した.また,歯根膜由来細胞および間葉系幹細胞の培養のため,ラット歯根膜および骨髄よりそれぞれの細胞を分離・培養し,そのキャラクタリゼーションを行い,至適培養期間を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,生体骨の主成分であるハイドロキシアパタイトを湿式法にて合成し,そのキャラクタリゼーションを行った.FTIR測定の結果,作製した粉体はリン酸イオンと水酸化物イオンを有し,X線回折測定の結果ハイドロキシアパタイトの結晶構造を有していた.作製した粉末用いて圧粉体を作製し,1250℃水蒸気雰囲気下で焼結し,コントロール試料とした.作製したペレットに,ディップ法にてブタ皮由来のI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンをコートした.コーティングした試料をFTIRにて解析したところ,コラーゲンをコートした試料ではアミド由来のバンドが観察され,また,SEM観察より,ハイドロキシアパタイトのみでは結晶粒が観察されたが,コートした試料では線維状構造物が試料表面に均一にコートされていた.以上より,コラーゲンが適切にコーティングされていることが示唆された.ラット歯根膜由来細胞を得たのち,そのキャラクタリゼーションを行ったところ,継代数の増加に伴い,骨形成因子であるRUNX2が減少し,Periostinの増加が認められた.3継代目以降に形質の変化が認められたことから,本研究では2継代目の歯根膜由来細胞を試料に供することとした.また,ラット骨髄より間葉系幹細胞を含む骨髄由来細胞を得たのちに,短期間での培養液の交換を行うことにより間葉系幹細胞の単離を行った.得られた細胞を,それぞれ骨芽細胞分化培地,軟骨細胞分化培地,脂肪細胞分化培地を用いて一定期間培養し,そのキャラクタリゼーションを行った.それぞれ,Alizarin red S染色陽性,Alcian blue 染色陽性,Oil red O染色陽性の細胞が観察され,いずれの細胞群にも分化可能であることが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
歯周組織再生のためには,歯周組織の恒常性の維持を担う歯根膜組織の再生が必須であり,なかでも歯根膜線維芽細胞のオートクライン・パラクライン的作用による細胞機能制御のメカニズムを明らかにする必要があると考えられる.そこで,本年度は種々のコラーゲンの歯根膜線維芽細胞に対する挙動を明らかにするために,コラーゲンコートハイドロキシアパタイトを作製し,歯根膜線維芽細胞を播種・培養を行う.一定期間培養したのちの歯根膜線維芽細胞の増殖性および石灰化能を評価する.また,コラーゲンコートハイドロキシアパタイトにより制御される歯根膜線維芽細胞のセメント芽細胞・骨芽細胞へのパラクライン的作用を明らかにするために,セルカルチャーインサートに各コラーゲンをコートし歯根膜線維芽細胞を播種する.また,細胞培養用ディッシュには間葉系幹細胞を播種し,共培養を行うことにより間葉系幹細胞の分化能を評価する.また,細胞間相互作用の影響を明らかにするために,カバーガラスにコーティングを施し,歯根膜線維芽細胞を接着させる.接着完了後,細胞を含むカバーガラスを新しい細胞培養シャーレに移し,その周囲にセメント芽細胞・骨芽細胞を播種し,一定器官培養後,細胞間相互作用の検討を,タンパク・遺伝子レベルで検討する.以上より,細胞外基質による歯根膜線維芽細胞の制御が歯周組織の恒常性維持に及ぼす影響を明らかにすることにより,歯周組織再生のための足場材料の設計指針を提示することを今年度の方針とする.
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Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由は,実験動物より細胞を採取するのに十分な細胞数が得られたため,最小限の購入になったためである.また,既存の試薬を用いて試料の作製を行ったため,差額が生じた.未使用額と次年度使用額を併せて以下の項目に関して使用する予定である.①研究成果発表のための旅費(国内会議,国際会議)②試料作製に必要な薬品,消耗品の購入③細胞実験のための必要な薬品,消耗品,解析用試薬など.
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Research Products
(1 results)