2020 Fiscal Year Research-status Report
type I およびtype IIIコラーゲンによる歯根膜細胞の機能・分化制御
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18K17086
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤田 和久 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (80805747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チタニア / 結晶面 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯と歯槽骨を結合する歯根膜組織は,多種多様な細胞群を含む線維性結合組織であり,骨とセメント質の2つの硬組織に囲まれているにもかかわらず石灰化せず,その厚さが一定である生体内でも稀有な組織で,歯周組織の恒常性の維持を担う.歯科診療において近年,幅広く用いられているインプラント治療は,この歯根膜組織が存在しないため,インプラント体周囲の歯周組織のリモデリングが行われず,加齢等による生体反応への適応性が低い.また,天然歯において歯周組織は細菌感染に対するバリア機能を発揮するが,インプラントによる治療が細菌感染に対して抵抗性が低い原因も,歯周組織の欠損に由来する.酸化チタンがコーティングされたチタンインプラントは生体活性が高く,近年では,埋め込み型生体材料の第一選択の材料とされている.酸化チタンは,一般的な合成を行うと{101}面が約95%を占めるが,適切な阻害剤を用いることにより{001}面が露出した酸化チタンを合成することが可能となる.{001}面は{101}面と比較して,表面自由エネルギーが高いことから種々のイオンやたんぱく質が吸着しやすく,また,その光触媒作用が高いことが報告されている.本年度は,作製したチタニアナノシートをインプラント材料にコーティングする技術の検討と,その細胞に対する影響を評価した. 高次構造を有するチタニアナノシートは通法によりコーティングを行うと,ランダムにコーティングされ{001}面および{101}面の配向性が損なわれるが,適切な分散材とpHのもとコーティングを行うことにより{001}面が多く露出したインプラント材料が作製された.また条件のさらなる検討の基,{101}面が優位に露出したコーティングが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は, ヘキサフルオロチタン酸アンモニウムとチタンブトキシドを出発原料とし,水熱合成によりチタニアナノシートを作製した.フッ素とチタンの仕込み比を,1.0 (NS1.0),1.5(NS1.5)とし作製したチタニアナノシートは,アナターゼ型チタニアで,平均サイズが30nmおよび100nmであった.UV照射により,それぞれの試料においてハイドロキシルラジカル及びスーパーオキサイドが生成した.ハイドロキシルラジカル及びスーパーオキサイドの生成量を比較したところ,それぞれNS1.5,NS1.0において最大の発生量を示し,絶対量としてNS1.0 が最も多く活性酸素種の発生した.また,カバーガラスへのコーティングを試み,溶媒のpHを変化させコーティングを行ったところ,低pHの際に{001}面が多く露出することが明らかとなった.しかしながら,コーティングしたチタニアナノシートの均一なコーティングは困難で,多くの部位で多層にコーティングされ,高次構造制御されたチタニアナノシートの優位性が担保されなかった.そこで,様々な溶媒を用いてコーティングを試みたところ,{001}面が優位に露出し,単層でのコーティングが可能となった.また,条件を変えたところ,{101}面が優位に露出したコーティング法が明らかとなり,今後,それらの評価を行う必要が生じた.本年度は,新型コロナ感染症に伴う研究活動の停止などから,当初の予定通り進捗できなかった.そのため,来年度まで延長を行い,本研究成果のまとめを行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,階層性チタンインプラント材料の開発のため,歯根膜線維芽細胞を,チタニアナノシートをコートしたカバーガラスに播種する.一定期間培養後,細胞―材料間相互作用の検討を,タンパク・遺伝子レベルで検討する.また,セメント芽細胞・骨芽細胞による硬組織形成能は,体液中のカルシウムイオンとリン酸イオンの過飽和状態と細胞外基質によるヘテロジーニアスな結晶成長と考えられている.セメント質の有機成分は,III型コラーゲンが多く発現し,一般的な骨の硬組織形成とそのメカニズムが異なることが考えられるため,形成された硬組織の評価を走査型電子顕微鏡や,顕微FTIRを用いて評価を行う.
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Causes of Carryover |
本年度は,新型コロナ感染症の拡大に伴い,当初計画していた細胞を用いた評価が遅れたため,次年度使用額が生じた.本内容は次年度に行うこととする.
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