2018 Fiscal Year Research-status Report
ポリコーム群タンパク質Bmi1による骨芽細胞分化促進メカニズムの解明と歯槽骨再生
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18K17090
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
建部 廣明 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (40638293)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Bmi-1 / 動物実験 / 幹細胞マーカー / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリコーム群タンパク質の1つであるBmi-1は細胞増殖に関わる遺伝子であることが知られている。近年、Bmi-1は細胞増殖だけではなく骨形成に関わることも報告されている。本研究では、Bmi-1の骨芽細胞の機能の詳細についての研究を進行している。はじめに、Bmi-1と骨形成との関連を検索するためには、幹細胞マーカーの1つとして知られているGli-1陽性細胞の局在を知ることが必須である。Gli-1は個体発生に関する遺伝子であり、近年では、マウスの歯根および、周囲組織発生に重要な関わりがあると報告されている。 本研究では、骨芽細胞の幹細胞であるGli-1陽性細胞の局在を遺伝子改変動物の歯槽骨を用いることによって検索した。Gli-1陽性細胞とその娘細胞がTomato蛍光色を示すマウスの大臼歯を抜去し、ヌードマウス皮下に移植する実験を行い、同部に新たに再生した歯槽骨におけるGli-1陽性細胞の局在を検索した。その結果、Gli-1陽性細胞は骨芽細胞に分化前に発生し、骨形成再生初期の骨芽細胞に関係していることが示唆された。なお、本研究結果は2018年9月の第60回歯科基礎医学会学術大会において発表した。 次に、骨発生過程においてBmi-1はどのような局在を示すかについて、実験動物の脛骨を用いてその局在を免疫組織化学的に検索した。ラット胎生12日(間葉細胞の凝集期)、13日(骨形成開始期)、生後7日(リモデリング開始前)、28日(リモデリング開始後)における脛骨のパラフィン切片を作製し、Bmi1抗体による免疫組織化学染色にて、膜内骨化ならびに軟骨内骨化の骨芽細胞分化過程におけるBmi1の局在を検討した。その結果、発生初期から軟骨原基周囲にBmi-1陽性細胞が認められた。さらに、その局在は、他の骨芽細胞マーカーと同様の局在を示した。この結果から、Bmi-1は軟骨内骨化過程に置いて重要な働きをもつことが示唆された。本研究結果は、2019年3月の第124回日本解剖学会学術大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリコーム群タンパク質の1つであるBmi-1は細胞増殖に関わる遺伝子であることが知られている。近年、Bmi-1は細胞増殖だけではなく骨形成に関わることも報告されている。本研究では、Bmi-1の骨芽細胞の機能の詳細についての検索を行うため、以下①~③の研究計画を立案した。①Bmi1の骨芽細胞での発現ならびに機能解析から、Bmi1が骨形成を促進することを明らかにする。②Bmi1による骨形成促進メカニズムを解明し、標的因子を同定する。③得られた標的因子を用いた歯槽骨再生療法の開発を試みる。 本年度は、脛骨発生時におけるBmi-1陽性細胞の局在を検索し、骨芽細胞分化マーカーであるOsterixやRunx2と同じ局在を示したことから、Bmi-1は骨芽細胞分化の初期に関わる因子であることが示唆された。本研究結果は第124回日本解剖学会学術大会において発表した。本研究結果は、予想された仮説通りである。また、その後は培養骨芽細胞へBmi-1遺伝子を導入、強発現させ、Bmi-1の骨芽細胞における機能をin vitroにおいて検索中である。これらのことから研究計画の①が概ね終了し、②の実験が進行中である。 ①に関しては、Bmi-1の遺伝子だけでなく、Gli-1遺伝子の機能解析も必要であったが実験当初は予期していなかった。従って次年度は、Gli-1遺伝子の骨芽細胞の機能の解析についても行うこととする。以上のことから、本研究課題の進捗状況としては、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から実験動物を用いてBmi-1の局在を検索し、Bmi-1が細胞増殖に関わる因子だけでなく、骨形成に関わる因子であるという新たな知見が得られた。次年度からは、Bmi-1が骨芽細胞の分化や機能にどのように関わっているのかについての検索を行う。 骨芽細胞の分化マーカーとしてOsterixやRunx2等が知られているが、Bmi-1との関係に関する報告は未だにされていない。具体的には MC3T3-E1細胞にBmi-1の発現ベクターおよびsiRNAを導入し、それぞれ強発現とノックダウンの状態にする。これらの細胞をデキサメタゾン、β-グリセロリン酸、アスコルビン酸添加培地で石灰化誘導する。0-7日後にALP染色ならびに骨芽細胞分化マーカー(Runx2、Osterix、Osteocalcin等)の遺伝子発現を比較する。5-14日後にアリザリンレッド染色で石灰化基質形成能を評価する。この実験方法により、in vivoだけでなくin vitroにおいてもBmi-1の機能を評価できる。本実験は現在進行中である。本実験についてはBmi-1の標的因子が、骨形成活性を促進する分泌タンパク質であることを想定している。しかし分泌タンパク質の同定が困難な場合、他に同定した転写因子等の下流因子を歯根膜細胞に遺伝子導入し、最終的に歯槽骨再生実験に用いることを考えている。また、幹細胞マーカーであるGli-1もBmi-1と同様の局在を示す可能性が高いため、Gli-1とBmi-1の局在についても実験動物を用いて検索する予定である。 次に明らかになった標的因子の発現ベクターから組換えタンパク質を精製する。歯槽骨再生動物実験モデル(予備実験済み)に精製した組換えタンパク質をマトリゲルと共に移植し、歯槽骨再生効果を既存の治療法と比較検討する。
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Causes of Carryover |
第124回日本解剖学会発表(2019年3月27日~3月29日)に関わる旅費の科研費での精算が年度内に完了されていないためである。次年度使用額に記載されている金額は第124回日本解剖学会発表に関わる旅費の精算に使用される。
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