2018 Fiscal Year Research-status Report
ジルコニアナノ粒子を用いた新規表面処理方法によるジルコニア強度の向上
Project/Area Number |
18K17098
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 宏明 岡山大学, 大学病院, 助教 (20746044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高透光性ジルコニア / 表面処理 / ジルコニアナノ粒子 / せん断接着強さ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の歯科治療において、機械的強度の高いジルコニアを用いたメタルフリーの歯科治療の重要性が増し、ジルコニア単体でも審美性に優れた高透光性ジルコニアの使用が増加している。しかし、これら高透光性ジルコニアは機械的強度の高い従来型と比較し、機械的強度が低く、適応範囲が限られる。そこで本研究では、高透光性ジルコニアの機械的強度をより高めることを目的とした。その方法として、ジルコニアナノ粒子を含有する表面処理溶液を塗布、焼成することで、ジルコニア表面にジルコニアナノ粒子による薄膜を形成し、機械的強度の向上を図ることとした。 本年度は当初の計画通り、以下のように実施した。①ジルコニアナノ粒子を含む溶液の作製:塩化水酸化ジルコニウムを原料とし、水熱法を利用してジルコニアナノ粒子を作製し、得られた単斜晶ジルコニアナノ粒子と、水やエタノール、シリカを用いて表面処理溶液を作製した。②作製した溶液の至適配合割合の検討:ジルコニアナノ粒子、シリカの割合を変化させ、至適配合割合の検討を行った。③作製した溶液の最適な表面処理方法の検討:作製した溶液を高透光性ジルコニアに滴下させ乾燥させる表面処理方法や小筆により塗布後に乾燥させる表面処理方法などを検討し、小筆により塗布することで、隅々まで残さず塗布でき、また、乾燥方法も、強圧のエアーではなく、弱圧で乾燥させることで、均一に塗布することが可能であった。④表面処理によるジルコニア表面性状の観察:表面処理溶液を塗布し焼結した際の表面性状をSEMにて観察した。表層にジルコニアナノ粒子とシリカの薄膜が形成されていることが確認できた。⑤表面処理による機械的強度向上の検討:表面処理を行い、最終焼成したジルコニア体の機械的強度について万能試験機を使用して計測した。mZrO2/SiO2が10/1、8/3の割合の表面処理溶液で処理した場合に有意に機械的強度が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に実験を進めることができ、次年度に行う予定であった、接着せん断試験を行うこともできた。実験の目的である、高透光性ジルコニアの機械的強度の向上は達成されている一方で、接着せん断試験を行った際に、その接着強さの低下が認められ、それを解決するための処理を現在検討しており、研究を継続中である。シランカップリング処理により、接着強さの低下から回復する傾向が認められており、更なる検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえ、ジルコニアナノ粒子を含む溶液の組成や配合割合を再検討し、更なる機械的強度の向上に寄与する至適組成、至適割合を総当り的に見出す。また、それに伴って、表面処理によるレジン接着性の評価を再検討し、接着性への影響を調べるとともに、接着力の低下を招かないような接着処理方法を検討する。
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Causes of Carryover |
当初は本年度に多種にわたる材料を使用して高透光性ジルコニアの機械的強度向上のための表面処理方法を模索する予定であったが、研究が概ね順調に遂行できていたため、次年度に向けて総当り的な組み合わせの材料の研究が十分遂行できるように、次年度分に使用額を繰り越すこととした。
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