PEEK冠の臨床応用に向けた基礎的研究

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K17113
• Research Institution: Tokyo Medical and Dental University
• Principal Investigator: 大森 哲 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (70706895)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: PEEK / ポリエーテルエーテルケトン / 歯冠修復材料 / 破壊強度

Outline of Annual Research Achievements

歯科治療において歯冠部歯質欠損症例や，根管処置歯に対する補綴処置を行う際に，クラウンによる歯冠補綴修復が行われる．新規メタルフリー修復材料としてポリエーテルエーテルケトン（PEEK）のクラウンへの応用が期待されている．PEEKは従来から歯冠補綴修復に用いられている金属と比べると審美性に優れるが，PEEK単体では審美修復材料としての十分な審美性を有しているとは言えず，より一層口腔内の色調に調和させるためにはPEEKへのコンポジットレジンの前装が有効と考えられている．
そこで本研究では，PEEKの歯冠修復材料への応用として，PEEK冠およびコンポジットレジン前装PEEK冠の臨床術式を確立・提案し，PEEK冠および前装PEEK冠の臨床応用の拡大に寄与することを目的とした．
これまでに新規PEEK材と歯質の接着条件の検討を行なった．大臼歯部の歯冠補綴修復を想定したモノリシックPEEK冠の強度の評価を行い，繰り返し荷重の有無による大臼歯部のモノリシックPEEK冠のクラウンの咬合面および軸面の厚み・形態の最適化，支台歯形成時の軸面の支台歯形成形態，咬合面の支台歯形成形態の最適化を行った．
本年度は小臼歯部の歯冠補綴修復を想定したコンポジットレジン前装PEEK冠の強度の評価を行なった．PEEKフレームワーク形態および前装部コンポジットレジン形態を変化させた状態で，コンポジットレジン前装PEEK冠を作製し万能試験機を用いて試料を破壊まで荷重し，破壊時最大荷重および破折様相の評価・検討を行なった．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

PEEK材は優れた機械的性質や生体適合性を有し，化学的にも非常に安定した性質を有しているため，歯冠修復材料として使用するには十分な接着が必要とされる．これまでにフィラーを含有させた新規PEEK材と歯質の接着条件を評価し良好な接着を得られることを確認した．大臼歯部の歯冠補綴修復を想定したモノリシックPEEK冠において，PEEK厚みを変化させたときの，繰り返し荷重の有無によるクラウン破壊強度の評価を行い，大臼歯部のモノリシックPEEK冠のクラウン形態および支台歯形成形態の最適化を行い，論文による成果発表を行った．また，小臼歯部の歯冠補綴修復を想定したPEEKへのコンポジットレジン前装を行いPEEKフレームワーク形態および前装部コンポジットレジン形態を変化させた時の，クラウン破壊強度および破折様相の解析とPEEKフレームワーク形態の最適化を行なった．

Strategy for Future Research Activity

これまでに，補綴装置に強度が求められる大臼歯部において，大臼歯部の歯冠補綴修復を想定したモノリシックPEEK冠の強度試験を行い，モノリシックPEEK冠のクラウン形態および支台歯形成形態の評価・検討を行った．補綴装置に審美性と強度の両方が求められる小臼歯部において，小臼歯部の歯冠補綴修復を想定したコンポジットレジン前装PEEK冠の強度試験および破折様相解析を行い，コンポジットレジン前装PEEK冠のPEEKフレームワーク形態および前装部コンポジットレジン形態の評価を行なった．
これらの結果をもとに，さらなるPEEKクラウン形態，支台歯形成形態，PEEKフレームワーク形態・前装部コンポジットレジン形態の改良を今度の予定として検討中である．

Causes of Carryover

本年度に購入予定であった消耗品等が既存のもので遂行可能であったため購入金額が計画よりも少なくなった．
次年度は，消耗品の購入および追加研究試料作製が必要なため，併せて使用する予定である．