象牙質コラーゲンの強化による接着耐久性の向上を目的とした象牙質処理法の構築

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K17130
• Research Institution: Nihon University
• Principal Investigator: 内田 悦子 (會田悦子) 日本大学, 松戸歯学部, 兼任講師 (90758088)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 象牙質コラーゲン / タンニン酸 / 熱変性温度 / ラマン分光分析 / EDTA

Outline of Annual Research Achievements

本申請では、ウシ象牙質からコラーゲンを抽出し、タンニン酸による象牙質コラーゲンの強化を試み、象牙質コラーゲンの強化が樹脂含浸層の劣化を抑制、ならびに、象牙質と接着性レジンセメントとの接着耐久性の向上への影響について検討し、これらの結果から、臨床応用を目的とし、タンニン酸を用いた接着耐久性の高い象牙質のプライマー処理法の構築を行うことを最終目標としている。
本年度は、昨年度に行った、タービンで切削した象牙質粉末と機械的に粉砕した象牙質粉末の構造変化をラマン分光分析にて解析した結果から、そのデータについて検討を行った。これらを比較した場合、タービンにて切削した場合、ヒドロキシプロリンが何らかの影響を受けた、つまり、トリプルヘリックス間の相互作用がタービンで切削したことによって破壊されたのではないかと考えられる。一方、タービンで切削しても、機械的に粉砕しても、主鎖のペプチド結合周囲のピークパターンが変化していなかったため、トリプルヘリックスは影響を受けていないと考えられる。しかし、これらの結果からは変化したコラーゲン構造の本質は捉えることができなかったため、他の分析法について調査を行った。
また、臨床応用に向け、象牙質に対するEDTAの処理時間、タンニン酸の濃度と処理時間を検討し、それらの条件の違いによる象牙質コラーゲンへの影響を検討するため、タービンにて切削した象牙質粉末および機械的に粉砕した象牙質粉末の作成を行った。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

本年度は、昨年度に行ったラマン分光分析の結果を元に、コラーゲン構造の本質を捉えるべく、他の測定方法について検討を行った。
しかし、外部へ測定を依頼するための試料の作成が遅れたこと、また、外部機関の業務一時縮小などの理由から、測定が進まなかったため、研究が遅れている。

Strategy for Future Research Activity

現在、タービンにて切削を行った場合、タンニン酸を作用させた場合、コラーゲン構造のトリプルヘリックス間、および、トリプルヘリックス内に変化が起こっていることは想定できるが、究明には至っていない。この究明については、分析を順次行っていく。
また、臨床応用に向け、象牙質に対するEDTAの処理時間、タンニン酸の濃度と処理時間を検討し、それらの条件の違いによる象牙質コラーゲンへの影響が判明した段階で、その条件を用いて象牙質接着面の処理を行い、レジンセメントを接着させ、接着耐久試験を行い、最終目標である象牙質とレジンセメントとの接着耐久性の向上を実現する。

Causes of Carryover

本年度、ラマン分光分析で究明に至らなかったコラーゲン構造について、ラマン分光分析以外の測定方法にて解明する予定であったが、試料作成の遅れにより、外部研究機関への測定依頼ができなかったため、その委託費用に充てる。
また、研究が遅れたことにより、接着耐久性試験の実施ができておらず、消耗品の購入をしなかったため、その購入費に充てる。