2018 Fiscal Year Research-status Report
力学的刺激に誘導される歯根膜線維の成熟におけるSPARC-DDR2経路の機能解明
Project/Area Number |
18K17142
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
井田 貴子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60790285)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 歯学 / 歯根膜 / 力学的刺激 / SPARC / DDR2 / コラーゲン線維 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯根膜は歯と歯槽骨の結合を担うだけでなく、咬合力に起因する力の緩衝作用、咬合感覚の感知に加えて、歯の萌出や矯正的歯の移動において重要な役割を果たしており、歯根膜組織における恒常性維持機構の理解は、本邦が目指す口腔機能の維持/再生による健康寿命の延長という観点からも重要である。臨床的に見られる咬合性外傷や廃用性萎縮に関する経験的な知見から、歯根膜組織の恒常性維持と力学的刺激の関係は古くから認識されてきた。しかしながら、力学的刺激と歯根膜の恒常性は単なる数値的な荷重量で定義することは困難であり、その背景にある生物学的な作用機序を理解することが、力に起因する歯根膜の多様な病態の理解と天然歯の保存に繋がると考えられる。これまで、先行研究において力学的刺激によってI型コラーゲン分子間の架橋が促進されることにより、歯根膜基質線維の成熟が誘導されることを明らかにしてきたが、その詳細な分子メカニズムについては未だ不明である。 本研究は細胞表面に存在するコラーゲンレセプターの一つであるDDR2と、その拮抗分子であるSPARCによる、SPARC-DDR2経路に着目し、力学的刺激に誘導される歯根膜基質線維の成熟過程におけるSPARC-DDR2経路の機能を明らかにしようとするものである。現在、マウスの歯根膜由来細胞を用いて、DDR2阻害剤による経路遮断がコラーゲン線維形成へ与える影響について検討を行っている。具体的には、DDR2阻害剤(AZ628)の存在下で歯根膜由来細胞を培養し、LOX遺伝子発現およびLOXタンパクの酵素活性測定を行うとともに、Picrosirius red染色によるマトリックスの成熟度を評価している。また、コラーゲン架橋に関しては、SDS-PAGEによる解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
SPARC-DDR2経路がコラーゲン線維形成に及ぼす影響の解析に時間を有しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
SPARC欠損マウスによるSPARCのコラーゲン線維形成への影響の解析については、来年度に行う予定とし、該当分の研究費は繰り越すこととした。さらに、当初の予定であった、SPARC-DDR2経路が力学的刺激に誘導されるコラーゲン線維形成に及ぼす影響の解析を進める。まずはDDR2阻害剤存在下の歯根膜細胞に対して伸展による力学的刺激を加え、LOX活性および基質線維の成熟に関する解析を行う。次にSPARC欠損歯根膜由来細胞を用いて同様の解析を行う。
|
Causes of Carryover |
上記の通り、現在SPARC-DDR2経路がコラーゲン線維形成に及ぼす影響の解析を行っている最中であり、今年度はSPARC欠損マウス購入には至っていない。次年度使用額は動物購入および維持費用に使用する予定である。
|