2019 Fiscal Year Research-status Report
Effect of mechanical stimulation on bone qualtiy around implant based on coupling factors
Project/Area Number |
18K17151
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
右藤 友督 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10816680)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 骨質 / インプラント / 荷重 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ラット上顎骨に埋入されたインプラントへの規則的な繰返し荷重が,インプラント周囲の骨質に与える影響とその制御分子を明らかにすることである. 9週齢Wistar系ラットの上顎第一臼歯を抜歯し,4週間後にチタン製スレッドタイプインプラントを埋入した.埋入3週間後より,片側のインプラントに規則的な繰返し荷重(10N,3Hz,1800回/2回/週)を2週間ならびに5週間付与して屠殺した(荷重群:各n=7).対側は荷重を付与せず非荷重群とした(各n=7).MicroCTによる三次元的骨構造解析から,5週間の荷重はインプラント周囲の骨量を変化させず,骨密度を有意に増大させることが分かった.また組織形態学的解析の結果,2週間の荷重は海綿骨領域の破骨細胞数,骨芽細胞数を有意に増大し,リモデリングの活性化が示唆された.また5週間の荷重は,骨細胞数,骨芽細胞数を有意に増大させることが明らかとなった.Picrosirius Red染色によるコラーゲン量の定量解析では,5週間の荷重が1型コラーゲン線維,3型コラーゲン線維の産生を有意に増加させていた.免疫組織学的解析では,長管骨における荷重応答性タンパクとして知られるSclerostinの免疫染色を行い,産生量の定量解析を行った結果,荷重群と非荷重群で有意な差は認められなかった.このことから,顎骨における荷重応答は長管骨と異なる可能性が示唆された. 更に,荷重付与30分後にラットを屠殺し,得られたインプラント周囲骨組織から遺伝子抽出を行い,定量qPCRによる遺伝子発現解析を行った.その結果,荷重は骨細胞関連遺伝子のPodplaninとMEPEの発現を上昇させていた. 顎骨における特異的な荷重応答性を明らかにし,歯科インプラント治療の荷重プロトコルならびに長期的安定の条件を構築する基盤として本研究の意義があると考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの第一臼歯抜歯,インプラント埋入ならびに荷重付与の手技は既に確立しており,問題なく動物実験を行うことができた.屠殺して得られた骨組織の解析については,骨質の変化を確認するためにマイクロCTによる3次元的骨構造解析とHE染色,TRAP染色,Runx2免疫染色,Pcrosirius Red染色を行った.定量qPCRによる遺伝子発現解析を行うために,凍結した骨組織を粉砕すると同時に埋入されているインプラントの除去を行い,インプラント周囲骨組織に存在する遺伝子抽出を行った.ハウスキーピング遺伝子と目的の遺伝子発現が確認されたことから、今後も同様の手技で遺伝子発現解析を行うことが可能であると判断した. 遺伝子発現解析の結果と,組織形態学的解析の結果より,骨質改変に関わる遺伝子の発現から骨質制御タンパクの産生,骨質の変化に至るまでの経時的な変化を検索する必要性が再確認された.そこで同様の手技を用いてインプラント埋入を行い,荷重をこれまでの5週間よりも短い2週間付与した実験モデルを作成して同様に解析を行った.荷重2週間と荷重5週間では,骨関連細胞ならびにコラーゲン線維の量と分布に違いが認められたことから,骨質の経時的変化を検索する上で適切なタイムポイントであったと判定した. 実験計画に則り,荷重実験を行ったラットのインプラント周囲骨を採取して,マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行った.現在この解析データから,荷重群で発現が増大した遺伝子を選別する作業を進めている. 以上より本研究はここまでおおむね順調に進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
H30年度に作成した5週間荷重モデル,令和1年度に作成した2週間荷重モデルの解析結果を用いて,荷重と骨質改変の関係を異なるタイムポイントで比較する.骨関連細胞数の比較は既に行っており,今後は細胞形態の解析と,荷重応答性が予測されるタンパクの発現について検索を行う.候補としてSemaphorin,Ephrinを検討している.2週間荷重と5週間荷重との間で大きな変化が認められる場合は,更に3週間荷重の群を作成する. また今回実施したマイクロアレイの結果を用いて,荷重応答性遺伝子の候補を選別し,遺伝子がコードするタンパクについても免疫組織化学的検索により定量解析を行う.これにより候補遺伝子を1~2つへと絞り込む.更に,荷重付与後からRNA干渉技術によりノックダウンを行い,これまでと同様の骨質評価から骨質制御分子の同定に挑む.候補分子のノックダウンには遺伝子導入薬剤とsiRNAの混合液をインプラント近傍の上顎骨内に注射投与する方法を用いる.
|
Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進んでいるが,免疫組織化学的解析に必要な抗体の最終的な選択には至らず,年度内購入は見送られた.現在選定は順調に進んでおり,R2年度前期において抗体の購入費用として使用する.
|