2020 Fiscal Year Research-status Report
軟骨変性疾患のVivoでのNADPHオキシダーゼに依存したヒアルロン酸分解の解明
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18K17155
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
井上 咲映 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (20783252)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軟骨細胞 / 炎症 / 軟骨基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症は、関節軟骨が変性する疾患である。すなわち、軟骨細胞に細胞死が起こり、軟骨基質が減少する。この軟骨変性にインターロイキン-1βなどの炎症性サイトカインが関与することが知られている。軟骨基質の減少には、NOX2による活性酸素の酸性に依存した酸性化、酸性化によるヒアルロニダーゼの活性化が関与することを明らかにして来た。NOX2の発現はMCT1が必要であることもすでに明らかにしている。ところで、関節軟骨には血管がなく、酸素は滑液から供給されるため、関節軟骨の表面と深部では酸素分圧が異なる。表層の酸素分圧は6%で、酸素分圧は表層からの距離に応じて低下し、深部では1%程度と言われている。ところで、変形性関節症における関節軟骨の変性は、関節軟骨表層から始まることが知られている。そこで、関節表層の酸素分圧に等しい6%酸素と深部のそれである1%酸素の環境で、インターロイキン-1β存在下、ATDC5細胞におけるMCT1及びNOX2の発現を解析した。NOX2 mRNAの発現誘導は、6%酸素と比較し、1%酸素では強く抑制されていた。前述のように、NOX2の発現にはMCT1が必要である。そこで、インターロイキン-1β刺激後のMCT1 mRNAの発現を調べたところ、6%酸素に比べ、1%酸素では発現が抑制されていた。これらの結果は、酸素分圧が高い関節軟骨表層ではMCT1の発現が高く、そのため、NOX2の発現誘導が起こりやすいため、軟骨基質の分解が起こりやすい可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変形性関節症における軟骨変性が関節軟骨表層から始まる現象をMCT1及びNOX2の発現の観点から考察が可能であることを示した。これは、関節疾患の病態を分子レベルで説明する重要な知見と考えられる。今回の結果は、酸性化に伴うヒアルロニダーゼ活性上昇による軟骨マトリックスの減少も酸素分圧依存的である可能性を示唆している。酸素分圧が細胞死と細胞外マトリックスの減少という軟骨変性を制御する可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性の軟骨細胞外マトリックス減少に対する酸素分圧の影響を評価したい。また、酸素分圧に応じた、炎症性サイトカイン依存性のMCT1の発現誘導のメカニズムを解析していきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)