2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17157
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
浦田 健太郎 日本大学, 歯学部, 助教 (60754398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 加齢 / 機械痛覚過敏 / 炎症 / ミクログリア / 口腔内 / 疼痛 / SAMP8 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢による口腔内疼痛受容機構の変調の解明を目的として,老齢促進モデルマウス(SAMP8雄性マウス20週齢,以下P8)及び老齢促進モデルマウスに対するコントロールマウス(SAMR1雄性マウス20週齢, 以下R1)を用い,左側上顎口蓋部歯槽粘膜への規定した切開による炎症誘発後の,延髄における三叉神経脊髄路角尾側亜核(Vc)の二次ニューロンの興奮性に対する,加齢変化が与える変調機構をミクログリアとミクログリアから放出されるサイトカインに着目し,コントロールマウスと比較して解析した。行動観察実験の結果,P8切開群は切開後1日目以降21日目まで,R1切開群は1日目から7日目まで機械痛覚過敏の発症を認め,切開後3日目以降のP8切開群は,R1切開群と比較しても機械痛覚過敏の増強と持続を認めた.免疫組織化学的解析の結果,切開後3日目と11日目において,P8切開群はR1切開群よりもミクログリアの活性化が有意に増強し,ミクログリアのうち傷害性ミクログリア(M1)の発現は3日目と11日目において,P8切開群はR1切開群R1非切開群と比較して有意な増強を認めた.またミクログリアのうち保護性ミクログリアである(M2)の発現は,切開後3日目においてP8切開群はR1非切開群と比較して有意な増強を認めたが,11日目ではR1切開群と比較して有意な減弱を認めた. 以上より,口腔内に発症した機械痛覚過敏は,加齢により増強と持続する事が明らかとなり,VcにおけるM1の活性化増強とM2の活性化減弱が関与している可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加齢が口腔内疼痛受容機構に与える影響の解明を目指して研究を行う上で,初年度では,①口腔粘膜損傷モデルマウスの作成及び機械痛覚過敏発症の確認と,②機械痛覚過敏発症時の,損傷部を支配するVcでの,加齢変化が及ぼすミクログリアの発現およびIL-1βの量に対する影響解析を予定していた。①に関しては,口腔粘膜切開により発症した機械痛覚過敏が加齢によって増強及び持続するというデータを得,順調に遂行された。②に関しては,加齢により活性化ミクログリアの発現が増加するという結果を得,また興味深いことに傷害性ミクログリア(M1)及び保護性ミクログリア(M2)が加齢によりコントロール群とは異なる特徴的な発現変化を示すという結果を得たことは,予想を上回る大きなデータと考えている。しかしながら,ミクログリアから放出されるIL-1βの解析に関しては,解析で困難を示した。よって,うまくいかない時の対応として想定していたTNF-αに現在ターゲットを移し,解析を進めていることから,総合的に判断し上記区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では当初の計画に従い,①ミクログリアから放出されるTNF-α発現量に対する加齢変化が及ぼす影響を免疫組織化学的解析によって明らかにする。この結果とこれまでの結果とを合わせることで,ミクログリアおよびTNF-αおよび口腔内機械痛覚過敏発症時の動態の明確化が可能になると考えている。②ミクログリアM1,M2,あるいはTNF-α阻害剤の髄腔内持続投与を行った上での行動薬理学的解析および免疫組織化学的解析を行う。この結果により,ミクログリアのM1,M2およびTNF-αによる口腔内損傷後の機械痛覚過敏発症に対する関与が明確になるとともに,コントロールラットと比較検討することで,加齢変化が口腔内疼痛受容機構へ及ぼす影響が明らかになると考えており,以上を今後の研究の推進方策とする。
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Research Products
(3 results)