2018 Fiscal Year Research-status Report
アロマセラピーによるストレス誘発性咬筋痛改善の脳神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K17164
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長谷川 真奈 新潟大学, 医歯学系, 特任助教 (90779620)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 痛み / ストレス / 神経科学 / ラット / 電気生理 / RVM |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスに伴う疼痛(ストレス誘発痛)はQOLの低下だけでなく社会的生産性をも損なうため、健康生活を維持する上でこれを制御することは非常に重要である。これまでに口腔顔面領域のストレス誘発痛は、中枢神経系の可塑的変化に起因することが明らかにされている。また、我々はストレスが顎顔面部への侵害刺激による三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)の興奮性を上昇させるだけでなく、脳幹の吻側延髄腹内側部(RVM)の興奮性を増大させることを、Fosタンパク(神経興奮のマーカー)の発現を指標とした形態学的実験によって明らかにした。内因性疼痛調節機構の主役であるRVMニューロンが発する下行性線維は、Vcなど侵害受容2次ニューロンの興奮性を制御することによって痛みを調節する。すなわち、ストレスに伴うRVMの機能低下、つまりRVMニューロンの興奮性の上昇または低下が痛みの増大と密接にリンクすると考えられる。アロマセラピーは嗅覚機能を用いた健康増進法であり、主な効用としてストレス軽減が知られている。本研究では、ストレス誘発痛におけるRVMの内因性疼痛制御機構の役割を解明し、ストレス誘発性咬筋痛に対するアロマセラピーの効果を吻側延髄腹内側部(RVM)ニューロンの興奮性を指標に明らかにすることを目的とした。今年度は、ストレス群動物および非ストレス群動物を用いて、RVMニューロンの特性を電気生理学的に定量・検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述した目的を達成するため、ラットを実験モデルとし、咬筋痛に対するストレスの影響をRVMでの神経興奮を指標に検索することとした。神経興奮は電気生理学的に定量した。RVMのニューロンは疼痛刺激に対する興奮性の違いから3種類に分類され(On cell:疼痛促進に関与、 Off cell:疼痛抑制に関与、 Neutral cell:疼痛への関与は不明)、それぞれを細胞外記録により単離することが可能である。ストレス群・非ストレス群での3種類の神経細胞の比率や活動性を定量、比較した。また、疼痛刺激として両群の動物に対し、咬筋相当部皮膚への温冷刺激装置 (Medoc社)を介した50度の熱刺激を行い、それぞれの応答性を記録し、その活動量や活動を開始する温度を両群間で比較した。その結果、情動ストレス処置によりON Cell、OFF Cell、Neutral Cellそれぞれの活動性に変調が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、上述の電気生理学的手法を用いてデータ収集を行う。今年度はRVMニューロンの興奮性を指標に、アロマセラピーの抗ストレス効果を検証する。得られた結果については学会発表や論文投稿を行い、研究成果とその有用性を国内外へ広く発信することを目指す。
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Causes of Carryover |
実験精度の向上などにより、使用動物数等が当初の予定を下回ったため。次年度使用額については使用する薬剤等の購入を予定している。
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