2020 Fiscal Year Research-status Report
三叉神経(痛覚特異的ニューロン群)のATPを介した炎症性疼痛の解明
Project/Area Number |
18K17179
|
Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
黒田 英孝 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (90755018)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 三叉神経 / ATP受容体 / P2X7受容体 / Panx-1チャネル / P2X4受容体 / 細胞間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みを伴う病態の多くは,炎症性疼痛に代表される侵害受容性疼痛である。その発生や調節機構の一つとして,ATPを介した細胞内・細胞間コミュニケーションが示唆されている.一次求心性神経(特に三叉神経系)におけるこれらの放出路やその分子実体についての詳細は未だ不明であり,ATPがどのような細胞間シグナル,また膜輸送機構を経て細胞外に放出されるかについては,結論付けられていない.本研究は,三叉神経系におけるATP受容体を介したこれらの細胞内・細胞間コミュニケーションの詳細について網羅的に検索することで,ATPを介した侵害受容機構を明らかにし,炎症性疼痛のメカニズムを解明することである. 本研究において,三叉神経節細胞は高濃度細胞外ATPやBz-ATPに対して二相性内向き電流を示し,この内向き電流はP2X7受容体阻害薬で抑制された.また,二相性内向き電流における2nd componentは,Panx-1チャネル阻害薬やATP分解酵素だけでなく,P2X4受容体阻害薬によって抑制された.以上のことから,三叉神経節細胞におけるP2X7受容体は,Panx-1チャネルとP2X4受容体を介したautocrineを示しす可能性が示唆された. 三叉神経節培養細胞に対する直接機械刺激は,高K+刺激に応答する神経細胞,非応答の非神経細胞ともに細胞内Ca2+濃度を増加させた.これらの細胞内Ca2+濃度の増加は脱感作減少を示さなかった.増加した細胞内Ca2+濃度の減衰は,高K+刺激に応答する神経細胞が非応答の非神経細胞よりも有意に緩徐であった.また,これらの細胞に対する直接機械刺激は,刺激された細胞のみならず,近傍する細胞の細胞内カルシウム濃度を増加した.以上のことから,三叉神経において,ニューロン-ニューロン相互作用・ニューロン-グリア相互作用が存在し,疼痛メカニズムに寄与する可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、研究業務が中断されていたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は三叉神経におけるATPを介した細胞内もしくは細胞間コミュニケーションを明らかにすることで、炎症性疼痛のメカニズムを解明することである。 本研究はこれまでに、三叉神経節細胞におけるP2X7受容体の自己調節機構を明らかにし、ニューロン-ニューロン相互作用・ニューロン-グリア相互作用が存在することを明らかにした。今後は、血管内皮細胞との共培養系を用いて、P2X7受容体活性化のトリガーとなる要因について検索を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大に伴う緊急事態宣言などで、研究が中断していたため。
|