2021 Fiscal Year Research-status Report
三叉神経(痛覚特異的ニューロン群)のATPを介した炎症性疼痛の解明
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18K17179
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
黒田 英孝 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (90755018)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 三叉神経 / ATP受容体 / P2X7受容体 / Panx-1チャネル / P2X4受容体 / 細胞間相互作用 / 軸索反射 / CGPR |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みを伴う病態の多くは,炎症性疼痛に代表される侵害受容性疼痛である。その発生や調節機構の一つとして,ATPを介した細胞内・細胞間コミュニケーションが示唆されている.一次求心性神経(特に三叉神経系)におけるこれらの放出路やその分子実体についての詳細は未だ不明であり,ATPがどのような細胞間シグナル,また膜輸送機構を経て細胞外に放出されるかについては,結論付けられていない.本研究は,三叉神経系におけるATP受容体を介したこれらの細胞内・細胞間コミュニケーションの詳細について網羅的に検索することで,ATPを介した侵害受容機構を明らかにし,炎症性疼痛のメカニズムを解明することである. 本研究は昨年度までに,三叉神経節細胞におけるP2X7受容体/Panx-1チャネル/P2X4受容体を介したautocrine現象の可能性,三叉神経節細胞とその近傍する細胞との細胞間相互作用が疼痛メカニズムに寄与する可能性を示唆した. 炎症反応は,神経終末から血管内皮細胞へと神経ペプチドが放出され、神経原性炎症が生じることが知られているが,三叉神経系におけるそれらのメカニズムは不明である.そこで,血管内皮細胞におけるカルシトニン受容体様受容体の発現と,受容体の活性化によるcAMP濃度レベルの動態を免疫蛍光染色と生理学的評価を用いて検討した.その結果,血管内皮細胞はGsタンパク質共役型受容体であるCカルシトニン受容体様受容体に免疫陽性であり,アデニル酸シクラーゼの活性化が細胞内cAMPレベルを増加させることが示された.一方で,三叉神経節細胞-血管内皮細胞共培養系を用いて,三叉神経節細胞に機械刺激を加えたところ,血管内皮細胞のcAMPレベルは変化を示さなかった(to be published).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより,2020年度は研究業務が中断されていたが、2021年度はおおむね順調に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は三叉神経におけるATPを介した細胞内もしくは細胞間コミュニケーションを明らかにすることで、炎症性疼痛のメカニズムを解明することである。 本研究結果は,これまでに,三叉神経節細胞のオートクラインによる疼痛自己増幅のメカニズム,三叉神経細胞とその周辺細胞との細胞間相互作用による疼痛調節機構のメカニズム,そして神経細胞に侵害刺激が加わった時の血管内皮細胞の応答を明らかにした. 今後は,三叉神経節細胞-血管内皮細胞共培養系を用いて,P2X7受容体活性化のトリガーとなる要因について検索を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、研究業務が中断・遅延したため。
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