2018 Fiscal Year Research-status Report
バイオイメージングによる顎関節症治療の新たな地平:咬筋性状の高精度精査
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18K17194
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新国 農 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80419316)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MRI / 顎関節症 / 咬筋痛 / T2 map |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで臨床的に顎関節症における咬筋痛の症例に対して、通常のモダリティまたはシークエンスでは検出不可能な咬筋内の質的変化・性状の変化を「組織を定量的に評価でき、かつ微細な変化を捉えることのできるバイオイメージング法」であるT2 mapを用いることで評価する試みを続けてきたが、平成30年度の検討で片側咬筋に圧痛のある症例では圧痛のない側と比較して有意に高いT2値を示すことが分かった。同じ検討で筋痛の中でも運動痛や自発痛の場合はこのようなT2値の差は生じないことも示され、この結果は咬筋に圧痛が生じている場合はT2値の上昇によって検出できる程度の内部水分含有量の増加による浮腫性変化が生じることを示し、咬筋に圧痛が生じている場合、T2 mapで定量的に評価が可能であることが示された。このことは咬筋痛の症例に対して治療を行った後の効果判定の定量的評価にもT2 mapが有用であるということでもある。これは本研究の着想に至った本来の目的に合致した結果の第一歩が得られたといえる。この結果に考察を加え、専門学術誌に論文を投稿、2018年6月にacceptされ、2018年10月に掲載された(The relationship between masseter muscle pain and T2 values in temporomandibular joint disorders. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2018 Oct;126(4):349-354. )
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度にはこれまでの研究の成果としてT2 mapで咬筋痛を評価できるのは咬筋に圧痛がある場合のみであることが分かった。これは咬筋に生じる痛みのうち、圧痛は筋組織内の水分含有量が上昇し、浮腫性変化が生じていることを裏付ける結果と言える。この結果を専門誌への論文投稿・掲載を通じてより広い研究者間との議論を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は高磁場MRIである3T MRIを用いて痛みのある咬筋内がどのような内部性状を有するか検討する予定である。これまで咬筋に痛みが生じる場合、咬筋の筋組織内に血流障害による水分の排出不良を原因とする浮腫性変化が生じ、その体積が増加することによって咬筋周囲の筋膜が緊張し、そこで生じる機械的刺激が原因であるという報告がされてきた。本研究でもこの仮説に基づいてT2 mapでの検討を進めてきたが、これまでの検討では限界があった。それは(1)痛みがある場合の咬筋T2値は痛みがない場合の咬筋T2値よりも高くなるが、咬筋内のT2値が高くなるのは痛みの原因となる浮腫性変化に限らず、加齢等による筋内の脂肪組織含有量の増加等によっても起こりうる(2)痛みがある場合の咬筋T2値はこれまでの検討では常に痛みのない側を参照として比較することで行ってきた。すなわち、左右両側咬筋に痛みがある場合、これまでの検討では評価不可能になる。この2点の問題を解決するため、上述した仮説に基づき、今後は痛みのある咬筋の筋膜・筋組織相当部のT2値の分布の変化に注目して検討を進めていく予定である。得られた検討結果は早急に関連国内・国際学会に手発表して問題提起するとともに、そこで得られた知見をもとにより詳細な検討・研究デザインの修正を行い、専門誌への論文掲載を行うことで顎関節症における咬筋痛の評価に対し、画像診断から有用な情報が得られるようにしたい。
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Causes of Carryover |
MRI画像データを処理ずる際にここまでの研究段階では高精細モニターを使用する必要性がなかったため、本年度での購入を中止した。今後これまでに得られた研究成果をもとに咬筋内の解剖学的・機能的な情報と照らし合わせた画像処理が必要になるため、次年度では購入予定である。また、画像データ保存用のメディアンについても使用する画像データの増加に伴いより大容量のものを購入・管理予定である。
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Research Products
(1 results)