2019 Fiscal Year Research-status Report
凍結切片を用いたiPS細胞の分化誘導法による品質評価法の確立
Project/Area Number |
18K17210
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
田所 晋 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (70552412)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 再生医療 / iPS細胞 / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の疾患や外傷により本来の機能や形態が失われた組織や臓器に対して、現在行われている生体臓器移植や人工臓器移植などの先端医療には、それぞれ拒絶反応や、耐久性・機械的強度などの様々な問題点や限界がある。このことから近年、様々な細胞源を用いた再生医療の果たす役割は大きくなってきており、なかでもiPS細胞を利用した再生医学は最も臨床応用が期待されている研究分野の一つである。しかし、iPS細胞を臨床に応用するためにはいくつかの克服すべき課題がある。現在、種々の増殖・分化因子を選択し組み合わせて添加する分化誘導法がほとんどで、理想的な分化誘導法は確立されていない。またiPS細胞の分化能の差を評価する品質評価法も確立されていない。 私はこれまでに肝臓及び脳・脊髄組織の凍結切片上でiPS細胞を分化誘導するという、従来の分化誘導法と比較し各種増殖・分化因子によらない全く新たな観点に立脚した分化誘導法を確立してきた。さらにこの過程で各種iPS細胞の誘導に対する反応性の差から品質評価法としても有用であることが証明された。 そこで、本研究ではこの分化誘導法を心臓、腎臓、膵臓、唾液腺の組織の凍結切片を用いて応用し、iPS細胞を分化誘導することが可能か否かを検討する。さらに由来の異なる数種のiPS細胞を用いて同様に分化誘導が可能か否かについて検討し普遍性を確認する。また、このときのそれぞれのiPS細胞での誘導効率の差について評価し、反応性の差による簡便な品質評価法として有用か否かを検討することで品質評価法の普遍性の確認し、本法の実用化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画に沿って、マウスの心臓、腎臓、膵臓、唾液腺から凍結切片を作製し、その切片上でiPS細胞を培養することで、それぞれの組織の細胞へと分化誘導することが可能か否かについて検討してきたが、形態の変化、遺伝子学的検討において、分化誘導の結果について普遍性が確認できていない。 さらには、研究においてiPS細胞の培養の過程で、位相差顕微鏡による観察下でiPS細胞の形態に未分化状態を疑う所見を認めた。そのため、培養していたiPS細胞と同一株で凍結ストックしているiPS細胞の品質確認を確認すること、また同一株で得たデータの再現性を再検討するのに時間を要したため、やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を得て、本法の各種臓器での分化誘導を検討する。
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Causes of Carryover |
iPS細胞の培養の過程で、位相差顕微鏡による観察下でiPS細胞の形態に未分化状態を疑う所見を認めた。そのため、培養していたiPS細胞と同一株で凍結ストックしているiPS細胞の品質確認を確認すること、また同一株で得たデータの再現性を再検討するのに予定外に数カ月を要した。 今年度は、引き続き各種組織の凍結切片上培養による分化誘導の検討を行うため、マウス、iPS細胞培養のための消耗品、ガラス製品を購入する。形態学的変化の観察、それぞれの細胞に特異的な分子のRNAの発現、タンパク質の発現につき確認するため、RNAやタンパク抽出試薬等各種試薬および消耗品を購入する。 また、凍結切片上培養におけるiPS細胞の分化誘導メカニズムを解明することを目指して、iPS細胞を各種臓器由来凍結切片から抽出したmiRNAの影響のみで培養するために4%パラホルムアルデヒド低濃度トリプシン、ディスパーゼおよびコンドロイチナーゼABC等各種試薬および消耗品を購入する。有効であると判断された因子を同定し、分化誘導時に添加することで、分化誘導の高率化が可能か否かについて検討するとともに、タンパク質やmiRNAを網羅的に解析し、分化に影響を及ぼす因子の特定を行い、iPS細胞の効率的分化誘導の確立につなげることを目指すため、抗体アレイやマルチプレックス解析やmiRNAアレイや次世代シークエンスなど解析のための費用を予定している。
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