2018 Fiscal Year Research-status Report
疾患炎症細胞を共培養利用した免疫調整性抗炎症細胞群による慢性唾液腺炎の新規治療
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18K17229
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
井 隆司 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30733448)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 唾液腺 / 抗炎症性細胞 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、シェーグレン症候群(SjS)患者に発症する慢性唾液腺炎を対象に、新規の培養法により誘導された抗炎症細胞群と障害唾液腺由来の炎症細胞との共培養で得た抗炎症作用増強細胞群 (Activated mononuclear cells; A-MNCs)を用いた細胞治療をマウスを用いた動物実験において展開し、慢性唾液腺炎に対する治療技術を開発することである。 当該年度ではまず新規培養法で誘導された抗炎症細胞群の特性解析をフローサイトメトリー解析を詳細に行った。この新規培養法は、マウス末梢血から抽出した単核球成分(MNCs)を、IL-6やSCFなど5種類の因子から成る単核球維持培地を使用した培養にて、7日間前後という短期間で抗炎症効果に特化した細胞群を抽出・増幅させる新規濃縮技術である。 抗炎症作用を発揮する活性化マクロファージやT細胞のサブセットを増幅させることが可能であったが、抗炎症細胞群の誘導ととも培養期間の延長による細胞死が多数確認されたため、抗炎症細胞群の十分な誘導と生細胞数の確保の観点から適切な培養期間の検討を行った。 一方、共培養に用いるSjSモデルのNODマウスの唾液腺組織内に浸潤する炎症性細胞の評価を同時に行った。NODマウスでは唾液腺導管周囲にリンパ球の浸潤が認められるが、12週齢以降に徐々に浸潤部位の拡大、浸潤部位数の増加が認められ、唾液分泌障害も認められた。浸潤リンパ球の特性解析については唾液腺組織片にてリンパ球の種類や成熟度の評価を、CD3, CD4, CD8などの表面マーカーを用いて組織化学的免疫染色で評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規培養法にて誘導された抗炎症細胞群における特性解析を実施した。これにより組織中より得られる炎症性細胞との共培養で得られるA-MNCsとの細胞特性の正確な比較が可能になったと考える。またマウス単核球とヒト単核球では新規培養法による誘導により抗炎症性細胞が増加する傾向は同様であったが、マウスの細胞を用いた場合は生細胞は圧倒的に少なくなることから、抗炎症細胞群への誘導が確認でき、共培養・移植に足る細胞数の確保のための培養条件の改良が、当初の計画に加えて必要であった。 一方、唾液腺組織中の炎症性細胞を、新規培養法にて誘導された抗炎症細胞群との共培養により感作させる目的で利用するが、SjSモデルであるNODマウスを使用してその炎症性細胞に着目して解析を行った。12週齢ころよりシェーグレン様病態が認められ始め、導管周囲にはリンパ球をはじめとした炎症性細胞の浸潤が確認された。さらにその浸潤部位のリンパ球の種類や分布を免疫組織化学染色にて詳細に行った。また週齢が高齢になるに従い、炎症性細胞の浸潤範囲・頻度も増加するため、経時的な炎症性細胞の特性の変化も評価している。これら解析により共培養に用いる炎症性細胞群の抽出に適当な表面マーカー・NODマウス週齢の検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
SjSモデルマウスからの障害唾液腺組織から炎症細胞を抽出し、新規培養法由来抗炎症細胞群との共培養を行う。具体的にはNODマウスの顎下腺組織より、炎症細胞群を単離する。これにより、新規培養法由来抗炎症細胞群との共培養で得られるA-MNCsの抗炎症作用増強を確認し、細胞投与を開始する。抗炎症作用増強については、共培養上清の炎症性サイトカイン(IL-6など)の濃度減少をELISA法により評価する。同時にM2Mφ、Tregへの形質転換をフローサイトメトリー解析で数量的に確認するとともに、A-MNCsの抗炎症細胞関連mRNAの発現レベル上昇を確認する。 続いて細胞投与による治療効果の評価を行う。細胞投与後、4週、8週、12週の各時点での唾液流出量を測定する。また同時に移植試料である顎下腺組織のHE染色により唾液腺障害評価法であるfocus scoreやfocus areaを測定し、障害性リンパ球浸潤程度や移植試料における免疫細胞(マクロファージ、Tリンパ球等)の解析を行う。 治療効果のメカニズムとしては投与細胞による抗炎症効果が予想されるが、さらに詳細な治療効果のメカニズム解析のため、投与細胞のトラッキングを行い、組織中の免疫担当細胞群との相互機能を評価する。
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